判旨
控訴審において被告人の出頭を要しない場合(刑訴法390条)には、被告人が不出頭のまま審理・判決をしても違憲・違法ではない。また、必要弁護事件であっても判決宣告のみを行う公判期日については、弁護人の立会いを要しない。
問題の所在(論点)
被告人および弁護人が不出頭のまま控訴審の審理および判決宣告を行うことが、刑事訴訟法390条、289条1項等に違反し、憲法37条1項の「公平な裁判所の裁判」を受ける権利を侵害しないか。
規範
1. 控訴審において、刑事訴訟法390条但書に基づき被告人の出頭が権利保護のため重要と認めて出頭を命じたなどの特別の事情がない限り、被告人は公判期日に出頭することを要しない。 2. 必要弁護事件であっても、判決の宣告のみを行う公判期日においては、必ずしも弁護人の立会いを必要としない。
重要事実
被告人は窃盗罪で懲役1年2月の判決を受け、量刑不当を理由に控訴した。控訴審の第1回ないし第3回(判決宣告)の各期日に際し、裁判所は被告人への召喚状および弁護人への通知書を送付したが、被告人はいずれの期日にも出頭せず、正当な事由の疎明もなかった。弁護人は第2回期日にのみ出廷して弁論を行い、裁判所は第3回期日に弁護人不在のまま判決を宣告した。
あてはめ
本件では、被告人の出頭を命じたのは被告人の権利保護のために重要と認めたため(法390条但書)ではないと認められるから、同条本文により被告人の出頭は不要である。また、第2回期日には弁護人が出廷して控訴趣意に基づく弁論を行っており、審理自体は弁護人立会いのもとで終結している。判決宣告期日は判決を言い渡すのみの手続であるため、判例の趣旨に照らし弁護人の立会いは必須ではなく、これらの一連の手続に違憲・違法な点は認められない。
結論
控訴審において被告人および弁護人の出頭なくなされた審理・判決宣告は、いずれも適法である。
実務上の射程
控訴審の事後審的性格に基づく被告人不出頭原則の確認と、判決宣告期日における必要弁護の要否を判断した射程の長い判例である。答案上は、控訴審手続の適法性や、判決宣告時における弁護権の保障の限界を論ずる際の根拠として用いる。
事件番号: 昭和25(あ)2535 / 裁判年月日: 昭和26年3月8日 / 結論: 棄却
しかし、控訴審では、被告人のためにする弁論は、弁護士たる弁護人でなければ、これをすることができないものであつて、被告人は、原則として公判期日に出頭することを要しないものであるから、所論第三回公判期日に弁護人が出廷して弁論をした以上、仮りに被告人を召喚しなくとも(本件では昭和二五年五月二七日第二回公判期日に被告人出頭の上…