原審が被告人に対し第一回公判期日の召喚状を発していることは所論のとおりであるが、右は刑訴三九〇条但書の規定にもとずいて被告人の出頭がその権利保護のため重要であると認めて出頭を命じたものでないことは記録に徴し明らかである。そして、被告人は控訴審において召喚に応じ公判期日に出頭する義務はないのであり、本件被告人は適法な公判期日の告知を受けながら自ら同公判期日に出頭しなかつただけであるから憲法三七条一項違反の論旨は既にその前提において失当である。
控訴審の公判期日に被告人に召喚状を発しながらその不出頭のまま結審した場合と憲法37条1項
憲法37条1項,刑訴法390条
判旨
控訴審において被告人は公判期日に出頭する義務はなく、適法な告知を受けながら自ら出頭しなかった場合には、被告人不在のまま判決をしても憲法37条1項・3項に違反しない。
問題の所在(論点)
控訴審において被告人が不在のまま審理・判決を行うことが、憲法37条1項(公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利)および同条3項(弁護人依頼権)に違反するか、特に被告人の出頭義務の有無との関係で問題となる。
規範
刑訴法390条の規定に基づき、控訴審では被告人の出頭は原則として要しない。裁判所が被告人の出頭を権利保護のため重要と認めて出頭を命じた(同条但書)場合を除き、被告人には公判期日への出頭義務はなく、適法な告知を受けながら自ら出頭しないことは憲法上の権利(37条1項・3項)の侵害には当たらない。
重要事実
被告人が控訴した事件において、原審(控訴審)は第一回公判期日の召喚状を発していた。しかし、被告人は適法な公判期日の告知を受けたにもかかわらず、公判期日に自ら出頭しなかった。なお、弁護人は公判期日に出頭して弁論を行っている。
あてはめ
本件において、原審が召喚状を発した事実はあるが、それは刑訴法390条但書に基づき被告人の出頭が権利保護に不可欠であると認めて命じたものではない。控訴審の構造上、被告人に公判出頭義務はなく、本件被告人は適法な告知を受けながら自ら出頭しなかったに過ぎない。また、弁護人は実際に出頭して弁論を行っているため、防御権の行使も保障されているといえる。
結論
被告人が自ら出頭しなかった以上、被告人不在で審理を進めた原判決に憲法37条違反の憲法違反はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
控訴審における被告人の在廷権・在廷義務の限界を示す。実務上、刑訴法390条により被告人の不出頭でも審理が可能であることの合憲性を支える根拠となる。答案上は、事後審的性格を有する控訴審の構造(法390条本文)を前提としつつ、手続保障が十分であったか(告知の適法性、弁護人の出廷)を検討する際の指標となる。
事件番号: 昭和29(あ)1333 / 裁判年月日: 昭和31年12月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審において被告人の出頭を要しない場合(刑訴法390条)には、被告人が不出頭のまま審理・判決をしても違憲・違法ではない。また、必要弁護事件であっても判決宣告のみを行う公判期日については、弁護人の立会いを要しない。 第1 事案の概要:被告人は窃盗罪で懲役1年2月の判決を受け、量刑不当を理由に控訴し…