論旨第七点は証拠調の際に被告人を出頭させなかつたことを憲法違反と主張しているので、記録を調べてみると、原審は第一回公判で本件につき事実の取調をする旨を宣し、昭和二六年一〇月二七日裁判所外において証拠調をしたのであるが、所論のとおり被告人はこれに立会していない。しかし、当時、松江刑務所に在監中であつた被告人に対し予め一〇月一九日証拠調期日は通知されており、尚、被告人の弁護人も右証人尋問に立会い被告人のため証人に対し直接に尋問する機会が与えられているのである。ところで「裁判所が証人を裁判所外で尋問する場合に被告人が監獄に拘禁されているときのごときは、特別の事由なき限り、被告人弁護の任にある弁護人に尋問の日時場所等を通知して立会の機会を与え被告人の証人審問権を実質的に害しない措置を講ずるにおいては」被告人自身を証人尋問に立ち会わせなくても憲法三七条二項の規定に違反しないことは当裁判所の判例とするところであるから(昭和二四年(れ)一八七三号、同二五年三月一五日大法廷判決、昭和二四年(れ)三三六号、同二五年九月五日第三小法廷判決)、原審の前記措置は被告人の証人審問権を実質的に害しないものというべく、論旨は理由がない。
被告人の証人審問権と、証人を裁判所外で尋問する場合に監獄に拘禁されている被告人を立ち会わせることの要否
憲法37条2項,刑訴法158条
判旨
裁判所が裁判所外で証人尋問を行う際、拘禁中の被告人を立会わせなくても、弁護人に通知し立会の機会を与え、被告人の証人審問権を実質的に害しない措置を講じていれば、憲法37条2項に違反しない。
問題の所在(論点)
裁判所が裁判所外で実施する証人尋問において、拘禁中の被告人を立会わせないまま手続を進行することが、被告人の証人審問権(憲法37条2項、刑訴法157条等)を侵害し、憲法違反となるか。
規範
裁判所が裁判所外で証人を尋問する場合、被告人が監獄に拘禁されているとき等の特別な事情があるときは、被告人弁護の任にある弁護人に日時・場所を通知して立会の機会を与え、被告人の証人審問権を実質的に害しない措置を講じている限り、被告人自身を立会わせなくても憲法37条2項(証人審問権)に違反しない。
重要事実
原審は、第1回公判で事実の取調をする旨を宣言し、裁判所外において証拠調べ(証人尋問)を実施した。当時、被告人は松江刑務所に在監中であったため、当該証拠調べには立会いをしていない。もっとも、被告人に対してはあらかじめ期日が通知されており、かつ、被告人の弁護人は証人尋問に立会い、被告人のために証人に対して直接尋問する機会が与えられていた。
あてはめ
本件では、被告人は刑務所に在監中という物理的制約があった。一方で、被告人本人にはあらかじめ期日が通知されており、さらに弁護人が実際に証人尋問に立会っている。この弁護人には証人に対する直接尋問の機会も保障されていたことから、被告人の防御権の行使としての証人審問権は、弁護人を通じて実質的に確保されているといえる。したがって、被告人本人を立会わせなかったことが直ちに権利の不当な侵害に当たるとはいえない。
結論
被告人を立会わせなかった原審の措置は、被告人の証人審問権を実質的に害するものではなく、憲法37条2項に違反しない。
実務上の射程
被告人の立会権(刑訴法157条1項)の例外を認める際の憲法適合的解釈として活用できる。特に、被告人が物理的に出廷困難な状況下で、弁護人の立会いや尋問機会が確保されている場合に、手続の適法性を肯定する根拠となる。
事件番号: 昭和27(れ)141 / 裁判年月日: 昭和27年11月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】窃盗罪の判示において被害物件が特定されていれば罪となるべき事実の説示として十分であり、被告人が事実を認めて争わず証人尋問の請求もない場合には、裁判所が職権で被害者を召喚し尋問する義務はない。 第1 事案の概要:被告人A、B、Cらは窃盗の罪で起訴され、第一審および控訴審において有罪判決を受けた。弁護…