しかし、控訴審では、被告人のためにする弁論は、弁護士たる弁護人でなければ、これをすることができないものであつて、被告人は、原則として公判期日に出頭することを要しないものであるから、所論第三回公判期日に弁護人が出廷して弁論をした以上、仮りに被告人を召喚しなくとも(本件では昭和二五年五月二七日第二回公判期日に被告人出頭の上第三回公判期日の告知を受けている)違法でもないし、また、原判決に影響を及ぼさないことも明白である。
控訴審において公判期日に被告人を召喚することの要否
刑訴法388条,刑訴法390条
判旨
控訴審において被告人は原則として公判期日への出頭を要せず、弁護士たる弁護人が出廷して弁論を行ったのであれば、被告人を召喚せず、その不在下で審理を進めたとしても違法ではない。
問題の所在(論点)
控訴審において、被告人を召喚せず、または被告人が不在の状態で弁護人のみが弁論を行った手続が、刑事訴訟法上の適法な審理として認められるか。
規範
控訴審は、事後審的性格を有することから、被告人のためにする弁論は弁護士たる弁護人が行わなければならない一方で、被告人本人は原則として公判期日に出頭することを要しない。したがって、弁護人が出廷して弁論権を行使している限り、被告人の不在は審理の有効性に影響を及ぼさない。
重要事実
被告人は第2回公判期日に出頭し、次回(第3回)公判期日の告知を受けていたが、第3回公判期日に被告人は出頭しなかった。同日、弁護士である弁護人が出廷して弁論を行ったところ、被告人側から被告人不在のまま審理が行われたことの違法性が争われた。
あてはめ
本件において、第3回公判期日には弁護士である弁護人が出廷し、被告人のための弁論を現に行っている。控訴審の構造上、被告人本人の出頭は原則として義務付けられておらず、防御権の行使は弁護人を通じて確保されているといえる。仮に被告人に対する個別の召喚手続に欠ける点があったとしても(本件では告知済み)、実質的な防御の機会は保障されており、判決に影響を及ぼすような違法は認められない。
結論
被告人の出頭を要しない控訴審において、弁護人が出廷して弁論を行った以上、被告人不在の審理は違法ではなく、原判決を破棄すべき理由には当たらない。
実務上の射程
控訴審における被告人の出頭不要原則(刑訴法390条)を確認した判例である。答案上は、控訴審の手続的特質を論じる際や、被告人欠席裁判の許容性を論じる際の前提として活用できる。ただし、現在の実務や刑訴法390条但書による例外規定(死刑等)との関係には注意が必要である。
事件番号: 昭和29(あ)1333 / 裁判年月日: 昭和31年12月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審において被告人の出頭を要しない場合(刑訴法390条)には、被告人が不出頭のまま審理・判決をしても違憲・違法ではない。また、必要弁護事件であっても判決宣告のみを行う公判期日については、弁護人の立会いを要しない。 第1 事案の概要:被告人は窃盗罪で懲役1年2月の判決を受け、量刑不当を理由に控訴し…