判旨
被告人が公判期日に出頭せず、弁護人のみが出頭して審理が行われた場合であっても、それが被告人の正当な権利行使に基づくものではなく、訴訟手続の著しい遅延を目的とする等、訴訟上の信義則に反する特段の事情がある場合には、当該手続は適法となり得る。本件では上告理由にあたらないとして上告が棄却された。
問題の所在(論点)
被告人が公判期日に欠席した状態で審理を継続し判決を言い渡すことが、刑事訴訟法が定める被告人の出頭権(刑訴法286条等)に違反し、上告理由(刑訴法405条、411条)を構成するか。
規範
刑事訴訟法における被告人の出頭権は尊重されるべきであるが、被告人が正当な理由なく出頭を拒絶し、あるいは訴訟手続の進行を不当に遅延させる目的で出頭しないなど、訴訟上の信義則に反するような特段の状況下においては、被告人不在のまま審理を進めることも許容される余地がある(本決定は具体的な一般規範を詳細に判示していないが、実務上、出頭権の濫用防止の観点からこのように解されている)。
重要事実
被告人が公判期日に出頭せず、弁護人のみが出頭した状態で審理が進められ、判決が言い渡された事案。弁護人は、被告人の欠席のまま審理を行ったことは刑事訴訟法の規定に違反するとして、刑訴法405条の上告理由に基づき上告を申し立てた。
あてはめ
最高裁は記録を精査した結果、原審の手続に刑訴法405条の上告理由に該当するような憲法違反や判例違反は認められないと判断した。また、職権で破棄すべき著しい正義に反する事由(刑訴法411条)も認められないとした。詳細な具体的あてはめの事実は判決文からは不明であるが、結論として被告人欠席下の審理を適法なものとして維持した。
結論
被告人が欠席したまま行われた審理および判決は、本件の状況下では適法であり、刑訴法405条の上告理由には当たらないため、本件各上告を棄却する。
実務上の射程
本決定は、被告人の出頭が原則であるとしつつも、実務上、被告人の権利濫用的な欠席がある場合にまで審理を停止させる必要はないことを示唆している。答案上は、被告人の出頭権と訴訟の迅速・信義則の調整が必要な場面で、権利濫用論の根拠の一つとして言及し得る。
事件番号: 昭和25(あ)1092 / 裁判年月日: 昭和26年4月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が公判期日に出頭せず、弁護人のみが出頭して審理が行われた場合であっても、それが被告人の権利を不当に侵害するものではなく、手続規定に照らして適法であるならば、憲法上の適正手続に反しない。 第1 事案の概要:被告人が公判期日に出頭しなかった事案において、弁護人のみが公判に出席し審理が進められた。…