新刑訴における控訴審は旧刑訴における控訴審とは異り、第一審手続の覆審ではなく、第一審判決における一定の事実点並びに法律点に対する事後審査の手続である。されば控訴審の公判期日には被告人は必ずしも出頭することを要せず、被告人のためにする弁論は弁護人でなければこれをすることができないものとされ、しかも検察官及び弁護人は控訴趣意書に基ずいて弁論しなければならない等特別の規定が訴訟法にも存在しているのである(刑訴第三八八等乃至第三九〇条参照)。従つて被告人に陳述の機会を与うべきことを定めている刑訴法第二九三条刑訴規則第二一一条等の第一審に関する規定は控訴審には準用せられず、被告人はその希望により、また刑訴第三九〇条但書による裁判所の命令により公判期日に出頭した場合裁判所が必要と認めてなす質問に対し任意に供述することができるものたるに過ぎない。されば控訴審において被告人に最終の陳述をなす機会を与えなかつたとしても、これを違法ということはできない。
控訴審において被告人に陳述の機会を与えることの要否
刑訴法404条,刑訴法293条,刑訴法388条,刑訴規則250条,刑訴規則211条
判旨
控訴審は事後審査的手続であり、被告人の出頭を要しないため、第一審における最終陳述の機会を定める規定は控訴審には準用されず、陳述を認めなくても違法ではない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法293条等が規定する被告人の最終陳述の機会(陳述権)は、事後審査的性格を有する控訴審においても保障されるか、あるいは同規定が準用されるかが問題となる。
規範
新刑事訴訟法における控訴審は、第一審手続の覆審ではなく、第一審判決の事実点および法律点に対する事後審査の手続である。そのため、被告人の最終陳述の機会を定める刑事訴訟法293条および規則211条等の規定は控訴審には準用されない。
重要事実
事件番号: 昭和35(あ)1499 / 裁判年月日: 昭和37年2月22日 / 結論: 棄却
被告人の最終陳述は第一審手続の規定であり、第二審裁判所が事実の取調をした場合には刑訴三九三条四項の弁論はできるが、最終陳述の規定(刑訴二九三条規則二一一条)の準用はないものと解すべきであるから、原審が被告人に最終陳述の機会を与えなかつたからといつて、これを違法ということはできない。
被告人は、控訴審(原審)の公判期日において発言を求めたが、裁判長により拒否され、最終陳述の機会を与えられなかった。これを不服として、被告人は訴訟手続に違法がある旨を主張して上告した。
あてはめ
控訴審は、被告人の出頭を必ずしも要さず(刑訴法390条)、弁護人による弁論を基本とし(同388条)、かつ控訴趣意書に基づき審理が行われる(同389条)。このように事後審査的な構造を持つ控訴審では、被告人が出頭した場合でも、裁判所が必要と認めて行う質問に対し任意に供述し得るにとどまる。したがって、第一審の規定は準用されず、最終陳述の機会を与えなかったことは違法とはいえない。
結論
控訴審において被告人に最終陳述の機会を与えなかったとしても違法ではなく、上告理由には当たらない。
実務上の射程
控訴審の事後審査的性格を根拠に、第一審の公判手続規定(特に被告人の関与に関するもの)の準用を否定する際のリーディングケースとなる。ただし、現在では被告人に対し陳述の機会を与える運用が一般的である点に留意が必要である。
事件番号: 昭和25(あ)2685 / 裁判年月日: 昭和26年5月11日 / 結論: 棄却
記録によつてみると被告人は第一審において犯罪事実を自白し詐欺の犯意を否認しなかつたのである。それゆえ控訴審において被告人は詐欺の犯意を否認し弁護人から所論証人三名を申請して事実の取調を求めたとしてもそれは控訴記録及び第一審で取り調べられた証拠に現われていない事実についての証拠の取調請求であるから結局刑訴第三九三条一項本…