控訴審が刑訴第三九三条第一項又は第二項の規定による事実の取調をした上同第四〇〇条但書により直ちに判決をする場合には、弁護人は右事実取調の結果に基いて弁論することができるに止まり(同第三九三条第四項)、同第四〇四条により同第二九三条を準用して被告人及び弁護人をして意見を陳述させ、また刑訴規則第二五〇条により同第二一一条を準用して被告人又は弁護人に最終に陳述する機会を与えなければならないものでないことは、昭和二五年四月二〇日第一小法廷判決、刑集四巻四号六四八頁、同年一〇月一二日第一小法廷決定、刑集四巻一〇号二〇八七頁、同二七年二月六日大法廷判決、刑集六巻二号一三四頁の趣旨とするところであるから、控訴審の手続に刑訴第二九三条、刑訴規則第二一一条の規定の準用があることを前提とする所論は失当である。
控訴審が事実の取調をなし自判する場合と刑訴第二九三条、刑訴規則第二一一の準用の有無。
刑訴法293条,刑訴法393条4項,刑訴法400条但書,刑訴法404条,刑訴規則211条,刑訴規則250条
判旨
勾留中の糧食差入禁止という不当な処遇があったとしても、自白の任意性は自白当時の状況に照らして判断される。また、控訴審が事実取調後に判決をする際、被告人等に最終陳述の機会を改めて与える必要はない。
問題の所在(論点)
1. 勾留中の糧食差入禁止という不当な処遇が自白の任意性に影響を及ぼすか。 2. 控訴審において事実取調を行った場合、被告人等に最終陳述の機会を与える必要があるか(刑訴法293条・刑訴規則211条の準用の有無)。
規範
自白の任意性は、勾留中の不当な処遇の有無にかかわらず、当該自白がなされた当時の具体的状況に照らして判断すべきである。また、控訴審において刑訴法393条1項・2項の事実取調後に同法400条但書により直ちに判決をする場合、弁護人は取調結果に基づく弁論(393条4項)ができるにとどまり、改めて被告人等に最終陳述の機会(293条、刑訴規則211条の準用)を与える義務はない。
事件番号: 昭和35(あ)1499 / 裁判年月日: 昭和37年2月22日 / 結論: 棄却
被告人の最終陳述は第一審手続の規定であり、第二審裁判所が事実の取調をした場合には刑訴三九三条四項の弁論はできるが、最終陳述の規定(刑訴二九三条規則二一一条)の準用はないものと解すべきであるから、原審が被告人に最終陳述の機会を与えなかつたからといつて、これを違法ということはできない。
重要事実
被告人らは有罪判決を受け上告した。被告人B側は、勾留中に糧食の差入を禁止された違法な状態で自白がなされたと主張し、その自白の任意性を否定した。また、控訴審の手続において、事実の取調が行われたにもかかわらず、被告人および弁護人に対し、意見陳述や最終陳述の機会(刑訴法293条、刑訴規則211条の準用)が与えられなかったとして、手続の違憲・違法を主張した。
あてはめ
1. 自白の任意性について、糧食差入禁止という事由があったとしても、記録上の自白当時の具体的状況に照らせば、任意性を疑うに足りる事由は認められない。したがって、不当な処遇が直ちに自白を不当に誘発したとはいえない。 2. 控訴審の手続について、控訴審は続審的性格を有し、事実取調後の弁論は393条4項に基づき行われる。一審のような最終陳述の機会付与を定めた規定(293条、規則211条)は、控訴審には準用されないと解するのが判例の趣旨である。
結論
1. 勾留中の不当処遇のみをもって自白の任意性を否定することはできず、自白当時の状況から任意性が認められる限り、証拠能力は否定されない。 2. 控訴審において被告人等に最終陳述の機会を与えなかったとしても、手続上違法ではない。
実務上の射程
自白の任意性判断において「自白当時の情況」を重視する実務慣行を裏付ける。また、控訴審の構造(続審性)に基づき、第一審の公判手続規定が必ずしも全て準用されるわけではないことを示す実例として、訴訟手続の適法性を論じる際に参照される。
事件番号: 昭和23(れ)534 / 裁判年月日: 昭和23年9月18日 / 結論: 棄却
一 被告人の公判廷の供述が前後矛盾する場合にその一部分を採用し他の部分を排斥することは證據の取捨選擇の一場合であつて原審の專權に屬するのである。 二 刑訴應急措置法第一三條第二項の規定は犯罪の構成要件たる事實に關する事實誤認の主張を上告理由とすることができない趣旨と解すべきである。 三 被告人は昭和二二年八月二四日(當…
事件番号: 昭和51(あ)1230 / 裁判年月日: 昭和51年12月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が警察官から拷問や強制を受けて不利益な供述を強いられたと疑わせる証跡が認められない場合、憲法36条(残虐な刑罰の禁止)および憲法38条(自白強要の禁止)違反を理由とする上告は前提を欠き、不適法である。 第1 事案の概要:被告人は警察官から拷問および強制を受け、自己に不利益な供述を強いられたと…
事件番号: 昭和31(あ)4407 / 裁判年月日: 昭和35年4月12日 / 結論: 棄却
一 被告人が控訴をした事件について、控訴裁判所が、第一審において有罪とした手段結果の関係にある私文書偽造、同行使、公正証書原本不実記載の犯罪事実のうち、公正証書原本不実記載の点を無罪とした場合に、第一審の刑より軽い刑を言い渡さなくても刑訴第四〇二条に違反しない。 二 刑訴法第四八条第二項にいう「重要な事項」とは、ことが…