判旨
被告人が密告以前から麻薬の買受人を物色し、多量の麻薬を所持して売却の意図を持って行動していた場合、捜査機関の働きかけがあったとしても、違法な捜査(おとり捜査)には当たらない。
問題の所在(論点)
犯意を有していた被告人に対し、捜査のきっかけ(密告等)を介して検挙した場合において、いわゆる「おとり捜査」として違法とされるか。
規範
犯意を誘発したのではなく、既に犯意を有している者に対して単に機会を提供したに過ぎない場合には、捜査の態様が正当な業務の範囲を逸脱しているとはいえず、適法な捜査と解される。
重要事実
被告人らは共謀の上、販売目的で塩酸ジアセチルモルヒネ約100gを所持していた。被告人らは、第三者から密告される以前から既に本件多量の麻薬の買受人を物色し、買受人が見つかれば麻薬を持参して交付し代金を受領する意図を有していた。被告人らは、普通一般に売却するつもりで当該麻薬を所持して現場へ向かった。
あてはめ
被告人らは、捜査機関側への密告がなされるより前の段階で、既に組織的に多量の麻薬を所持し、積極的に買受人を物色していた。このことから、被告人らには捜査機関側の働きかけとは無関係に、独立した強固な犯意が既に形成されていたといえる。したがって、本件における所持・販売の意図は外部からの誘発によるものではなく、自己の意思に基づき実行に移されたものであると評価される。
結論
本件捜査は適法であり、被告人らによる麻薬所持の事実は有罪と認められる。
実務上の射程
犯意誘発型ではなく、犯意を有する者に対して機会を提供する「機会提供型」のおとり捜査の適法性を認めた初期の判例である。答案上は、被告人が「既に犯行の準備を進めていたか」や「自発的に買受人を物色していたか」という事実を指摘し、犯意が捜査機関によって作り出されたものではないことを論証する際に用いる。
事件番号: 昭和27(あ)5648 / 裁判年月日: 昭和29年4月13日 / 結論: 棄却
取調請求のあつた証人のある者につき、許否の決定を留保したまま公判が続行されたが、証拠調を終えようとするにあたり、裁判官が反証の取調の請求その他の方法により証拠の証明力を争うことができる旨を告げたのに対し、請求当事者が「他に取調を請求する証拠はない」と述べたときは、右証人の取調請求は放棄されたものと解すべきである。