判旨
法律の改正により罰則が廃止された場合であっても、改正前の行為については、別段の経過規定がない限り、刑法6条(刑の変更)の問題ではなく「刑の廃止」として免訴(刑訴法337条2号)となるべきかが問題となるが、本判決はこれを否定した先例を引用し、本件について刑の廃止には当たらないと判断した。
問題の所在(論点)
法令の改廃により罰則が変更または廃止された場合、それが刑訴法337条2号にいう「刑の廃止」に該当し、免訴の判決をすべきか、あるいは旧法を適用して処罰を維持できるかが問題となる。
規範
法令の改廃により罰則が廃止された場合に、それが実質的な処罰の必要性の消滅に基づくものではなく、単なる事実関係の変更に伴うものであるときは、旧法下で行われた行為の可罰性は失われず、刑訴法337条2号の「刑の廃止」には該当しない。したがって、行為時の法律に従って処断されるべきである。
重要事実
上告人は特定の犯罪行為(具体的な罪名は判決文からは不明)について起訴され、下級審で有罪判決を受けた。その後、関連する法令の改廃があったことから、弁護人は「刑の廃止」があったものとして、上告審において刑訴法337条2号の適用(免訴)を主張した。
あてはめ
最高裁判所は、過去の大法廷判決(昭和28年4月8日判決等)の趣旨を引用し、本件における法令の変化は、実質的に刑を廃止し処罰を免除させる性質のものではないと判断した。調書等の手続面においても、所定の手続が履践されていないとはいえず、実体法上の可罰性に影響を与えるような事情は認められない。
結論
本件における法令の変更は刑の廃止には該当せず、刑訴法337条2号は適用されない。したがって、上告を棄却し、原判決の有罪を維持する。
実務上の射程
事件番号: 昭和27(あ)4433 / 裁判年月日: 昭和29年6月18日 / 結論: 棄却
昭和二四年政令第三八九号は昭和二七年法律第一三七号により昭和二七年五月七日廃止されたことは所論のとおりであるが、同法第三条により右廃止前にした右政令第一条違反の行為については従前の例により処罰すべきものである。註。本件は軍票の収受。
法令改廃時の経過措置に関する標準的な解釈を示すものである。司法試験においては、刑法6条の「刑の変更」と刑訴法337条2号の「刑の廃止」の区別が問われた際、本判決が引用する大法廷判決の論理(事実上の変更か法的な評価の変更か)を補充する文脈で使用される。
事件番号: 昭和27(あ)6708 / 裁判年月日: 昭和29年8月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】犯罪後の法令改廃により罰則が廃止された場合であっても、経過規定により「なお従前の例による」とされるときは、憲法31条や39条に抵触せず、当該行為時の罰則を適用して処罰することができる。 第1 事案の概要:被告人は「連合国占領軍財産等収受所持禁止令」に違反する行為を行った。しかし、原判決の時点におい…
事件番号: 昭和28(あ)4078 / 裁判年月日: 昭和30年6月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】政令による大赦の対象範囲の制限は恩赦法2条に反せず有効であり、大赦の対象から除外された罪については免訴の言渡しをすることはできない。 第1 事案の概要:被告人は米国軍票所持罪に問われていたが、昭和27年政令117号1条83号本文によれば同罪は大赦の対象となり得るものであった。しかし、同号但書によっ…
事件番号: 昭和30(あ)2219 / 裁判年月日: 昭和35年4月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】連合国占領軍財産等収受所持禁止令は、占領目的の達成のみならず国内経済秩序の維持という公共の福祉をも目的とするため、平和条約発効後も当然に失効せず、その効力を維持させた法律も事後立法には当たらない。 第1 事案の概要:被告人は、昭和24年政令389号(連合国占領軍財産等収受所持禁止令)に違反する行為…
事件番号: 昭和28(あ)3996 / 裁判年月日: 昭和35年3月16日 / 結論: 棄却
一 昭和二四年政令第三八九号(連合国占領軍財産等収受所持禁止令)第一条は、憲法第二九条に違反しない。 二 右昭和二四政令第三八九号は、憲法第三一条に違反しない。 三 所論は、昭和二四年政令第三八九号(連合国占領軍財産等収受所持禁止令)を廃止すると共に、「この法律の施行前にした所為に対する罰則の適用については、なお従前の…