昭和二四年政令第三八九号は昭和二七年法律第一三七号により昭和二七年五月七日廃止されたことは所論のとおりであるが、同法第三条により右廃止前にした右政令第一条違反の行為については従前の例により処罰すべきものである。註。本件は軍票の収受。
昭和二四年政令第三八九号第一条違反行為は同令廃止後も処罰されるか
昭和24年政令389号1条,昭和27年法律137号2条2号,昭和27年法律137号3条1項
判旨
法令の廃止に際し、経過規定により廃止前の違反行為を処罰するものと定めている場合、当該規定は有効であり、刑法6条及び刑訴法337条2号の原則にかかわらず、従前の例に従って処罰される。
問題の所在(論点)
刑罰法令が廃止された場合において、廃止法に「従前の例により処罰する」との経過規定があるとき、なお旧法を適用して処罰することは許されるか。刑の変更(刑法6条)や法令廃止による免訴(刑訴法337条2号)との関係が問題となる。
規範
法令が改廃された場合、原則として刑法6条(刑の軽重の比較)や刑訴法337条2号(免訴)の問題が生じ得る。しかし、廃止を定めた法律自体に「廃止前の違反行為については従前の例により処罰すべき」旨の経過規定(経過措置)が置かれている場合には、その規定に従い、廃止された旧法を適用して処罰を継続することが認められる。
重要事実
被告人は、昭和24年政令第389号に違反する行為を行った。しかし、当該政令は昭和27年法律第137号により1952年5月7日に廃止された。このため、被告人は法令の廃止を理由として処罰を免れるべきであると主張して上告した。一方で、廃止を定めた法律第137号の第3条には、廃止前の違反行為について従前の例により処罰する旨の規定が存在していた。
事件番号: 昭和27(あ)6708 / 裁判年月日: 昭和29年8月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】犯罪後の法令改廃により罰則が廃止された場合であっても、経過規定により「なお従前の例による」とされるときは、憲法31条や39条に抵触せず、当該行為時の罰則を適用して処罰することができる。 第1 事案の概要:被告人は「連合国占領軍財産等収受所持禁止令」に違反する行為を行った。しかし、原判決の時点におい…
あてはめ
本件において、昭和24年政令第389号は確かに法律第137号によって廃止されている。しかし、同法3条には廃止前の違反行為に対する処罰を維持する経過規定が明示されている。このような経過規定がある以上、法令の改廃に伴う有利な変更として刑法6条を適用したり、刑訴法337条2号により免訴としたりする必要はなく、当該規定に基づいて依然として処罰が可能であると解される。
結論
廃止法に経過規定がある場合、廃止前の違反行為についてはなお旧法が適用されるため、被告人を処罰した原判決は正当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
法令が改廃された際の「限時法」的処理や「事実上の変更か法律上の変更か」という議論において、経過規定が存在する場合の処理を示す基本判例である。答案上は、法令の改廃が問題となる場面で、まず経過規定の有無を確認し、あれば本判例の趣旨に従って「従前の例」による処罰を肯定する流れで使用する。
事件番号: 昭和27(あ)4121 / 裁判年月日: 昭和30年4月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法律の改正により罰則が廃止された場合であっても、改正前の行為については、別段の経過規定がない限り、刑法6条(刑の変更)の問題ではなく「刑の廃止」として免訴(刑訴法337条2号)となるべきかが問題となるが、本判決はこれを否定した先例を引用し、本件について刑の廃止には当たらないと判断した。 第1 事案…
事件番号: 昭和30(あ)2219 / 裁判年月日: 昭和35年4月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】連合国占領軍財産等収受所持禁止令は、占領目的の達成のみならず国内経済秩序の維持という公共の福祉をも目的とするため、平和条約発効後も当然に失効せず、その効力を維持させた法律も事後立法には当たらない。 第1 事案の概要:被告人は、昭和24年政令389号(連合国占領軍財産等収受所持禁止令)に違反する行為…
事件番号: 昭和28(あ)4769 / 裁判年月日: 昭和33年3月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】昭和20年勅令第542号及びそれに基づく政令は、平和条約の発効により当然に失効するものではなく、廃止後の罰則存続規定により、廃止前の違反行為を処罰することは憲法上許容される。 第1 事案の概要:被告人は、昭和24年政令第389号に違反する行為を行った。その後、昭和27年に平和条約が発効して占領が終…
事件番号: 昭和28(あ)3996 / 裁判年月日: 昭和35年3月16日 / 結論: 棄却
一 昭和二四年政令第三八九号(連合国占領軍財産等収受所持禁止令)第一条は、憲法第二九条に違反しない。 二 右昭和二四政令第三八九号は、憲法第三一条に違反しない。 三 所論は、昭和二四年政令第三八九号(連合国占領軍財産等収受所持禁止令)を廃止すると共に、「この法律の施行前にした所為に対する罰則の適用については、なお従前の…