判旨
一の行為が複数の罪名に触れる観念的競合の関係にある場合、その一方が大赦令により赦免の対象となる罪であっても、他方が赦免対象外の罪であるときは、被告人は刑事責任を免れない。
問題の所在(論点)
一の行為が赦免対象の罪と対象外の罪の双方に該当する場合(観念的競合)、大赦の効力は行為全体に及び刑事責任を消滅させるか。また、これを処罰することは憲法39条(二重処罰の禁止・遡及処罰禁止)に違反するか。
規範
一の行為が複数の罰則に触れる場合、たとえその一方が大赦令によって赦免された罪(政令第165号違反等)に該当したとしても、同時に赦免の対象外である他の罪(たばこ専売法違反等)を構成するときは、大赦令第2条の規定に照らし、当該行為全体の刑事責任が免除されるものではない。
重要事実
被告人は外国煙草を不法に所持していた。この行為は、政令第165号(連合国軍有財産等の不法所持等に関する件)違反の罪に当たると同時に、たばこ専売法66条1項、71条の罪にも触れるものであった。昭和27年4月28日の大赦令(政令第117号)により、政令第165号違反の罪については赦免の対象となったが、たばこ専売法違反については対象外であった。
あてはめ
被告人の本件行為は、公訴事実自体から明らかな通り、たばこ専売法違反の罪を構成している。大赦令2条は赦免の範囲を限定しており、行為が赦免対象外の罪名に触れる以上、当該罪名での起訴及び処罰は妨げられない。したがって、特定の罪名が赦免されたことを理由に、同一の行為から生じる別罪の処罰を免れることはできない。
結論
被告人の行為は、大赦令により赦免されない罪(たばこ専売法違反)に該当するため、刑事上の責任を問うことは憲法39条に違反せず、有罪とするのは正当である。
実務上の射程
事件番号: 昭和27(あ)2551 / 裁判年月日: 昭和27年11月28日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】公訴事実の一部について大赦があった場合、裁判所は刑訴法337条3号に基づき免訴の言渡しをしなければならない。本判決は、複数の罪が起訴された事案において、大赦の対象となった罪について免訴を認めつつ、他の罪については有罪を維持した。 第1 事案の概要:被告人は、昭和24年政令第389号違反(ポツダム宣…
観念的競合における恩赦の効力の及ぶ範囲を限定的に捉えた判例である。罪数論上、一の行為が複数の評価を受ける場合、各罪名ごとに大赦の適否を判断すべきという実務指針となる。答案上は、免訴事由(刑訴法337条1号)の有無を検討する際の解釈として活用できる。
事件番号: 昭和29(あ)2611 / 裁判年月日: 昭和32年2月23日 / 結論: 棄却
日本専売公社の売渡さない製造たばこを不法に所持するたばこ専売法六六条一項違反の罪と連合国占領軍又はその要員の財産を不法に所持する昭和二四年政令第三八九条第二条第一項違反の罪とは、所論の如く一般法と特別法の関係または吸収犯の関係に立つものではなく、両者は一個の行為にして数個の罪名に触れる場合にあたるものと解するを相当とす…