判旨
権利行使の手段として行われた恐喝行為について、事実審において権利の存在や行使の事実が主張されていない場合には、裁判所は権利行使の正当性について判断を要しない。
問題の所在(論点)
権利行使を目的とする恐喝行為について、事実審で主張されていない事実に基づき、上告審において判例違反(違法性阻却事由の不検討)を主張することができるか。
規範
恐喝罪の成否において、権利の行使として財物等を交付させた場合であっても、それが権利の範囲内であり、かつその方法が社会通念上相当と認められる範囲を超えない限りは違法性が阻却される。しかし、裁判所がこの判断を行う前提として、事実審において当該行為が権利の行使である旨の具体的な主張がなされている必要がある。
重要事実
被告人が恐喝の罪で起訴された事案において、弁護人は上告審において「被害者から財物又は財産上の利益を受けるべき権利があり、これを行使したものである」旨を主張し、原判決の判例違反を訴えた。しかし、記録上、被告人および弁護人は第一審および控訴審の事実審段階において、かかる権利の存在や行使に関する主張を一切行っていなかった。
あてはめ
本件において、被告人側は事実審で「権利を行使した」という事実を主張した形跡がない。原判決は、当事者から主張されていない事実について判断を示す義務はないため、権利行使の適否について判断を遺脱したとはいえない。上告審における弁護人の主張は、原判決が認定していない事実を前提とするものであり、適法な上告理由には当たらないと解される。
結論
事実審で主張されなかった権利行使の事実は上告理由とはならず、本件上告は棄却される。
実務上の射程
権利行使と恐喝の論点(昭和30年判決等)の前段階として、事実審での主張立証の重要性を示す。答案上は、違法性阻却の要件を論じる際に、具体的な権利の存在と行使の態様が主張・認定されているかを確認する際の注意点として機能する。
事件番号: 昭和27(あ)5978 / 裁判年月日: 昭和28年9月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】権利行使の目的があったとしても、その手段が社会通念上許容される範囲を超え、刑罰法規の構成要件に該当する場合には違法性が阻却されず、犯罪が成立する。 第1 事案の概要:被告人が何らかの行為(具体的な罪名は判決文からは不明だが、前審の判断を引用する形式)に及び、その正当化事由として権利行使の目的を主張…