判旨
控訴審が第1審判決を破棄し自ら量刑処断を行う場合、控訴趣意のうち量刑不当の主張に対する判断を省略することは正当であるが、その他の論旨に対する判断省略は違法である。ただし、当該論旨が判決に影響を及ぼさず、破棄差し戻しの事由がないことが明らかな場合は、刑訴法411条を適用して破棄する必要はない。
問題の所在(論点)
控訴審が自判をする場合において、控訴趣意のうち量刑不当およびその他の主張に対する判断を省略することの適法性(刑事訴訟法上の判断遺脱の成否)、およびそれが上告審における破棄事由(刑訴法411条)となるか。
規範
1. 控訴審が自ら判決(自判)をする場合、量刑不当を理由とする控訴趣意については、自ら量刑を決定する過程で実質的に判断されているため、個別に判断を示す必要はない。 2. しかし、その他の控訴趣意(事実誤認や法令違反等)について判断を遺脱することは違法である。 3. もっとも、上告審において当該論旨を検討した結果、原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認められない場合には、刑訴法411条による破棄はなされない。
重要事実
被告人が第1審判決に対し控訴を提起した。控訴審(原判決)は、第1審判決を破棄し、自ら量刑を処断した。その際、控訴趣意のうち「量刑不当」の主張、および「その余の論旨」についても特段の判断を示さなかった。これに対し弁護人が、判断を省略した点に違法があるとして上告した事案である。
あてはめ
1. 量刑不当の点について:原判決は自ら量刑処断を行っているため、量刑不当の主張を検討した上で自らの刑を定めたといえる。したがって、これに個別の判断を示さなかったことは正当である。 2. その余の論旨について:これらについて判断を省略したことは、本来なされるべき判断を欠いており、判決のプロセスとして「違法の誹を免れない」。 3. 救済の必要性について:記録を精査したところ、これらの判断遺脱された論旨には、破棄差し戻しをすべき実質的な事由が含まれていないことが明らかである。したがって、刑訴法411条を適用してまで原判決を破棄すべきものとは認められない。
結論
量刑不当以外の控訴趣意への判断省略は違法であるが、その内容が判決の結果に影響せず、破棄しなければ著しく正義に反すると認められない本件においては、上告棄却を免れない。
実務上の射程
控訴審の判断遺脱(刑訴法392条・400条関連)に関する処理の限界を示している。実務上は、形式的な判断漏れがあっても、それが結論に影響しない微細なものであれば、411条の「著しく正義に反する」という高いハードルによって上告審で救済されない(判決維持される)という枠組みを論証する際に用いる。
事件番号: 昭和28(あ)4391 / 裁判年月日: 昭和30年10月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】窃盗罪の判示において、盗品が「財物」であることを示すのに必要な品目および数量を記載すれば足り、その評価額を記載する必要はない。また、控訴審が事実確定に影響しない理由で自判する場合、第一審が確定した事実をそのまま引用して法令を適用することができる。 第1 事案の概要:被告人は窃盗罪(刑法235条、6…