判旨
自白と他の証拠により犯罪事実の真実性が保障される限り、構成要件の一部が自白のみに基づいても憲法38条3項に違反しない。また、業務上横領罪の対象となる保管金は、会計法上の性質を問わず、目的を持って業務上保管されている実態があれば足りる。
問題の所在(論点)
1. 犯罪構成要件の一部が自白のみによって認定される場合、憲法38条3項(補強法則)に抵触するか。2. 会計法上の規定とは別に、実質的に業務上保管されている予算外資金が業務上横領罪の客体(保管物)に含まれるか。
規範
1. 憲法38条3項の自白の補強証拠について:自白にかかる犯罪事実の真実性が他の証拠によって保障される限り、犯罪構成要件の一部についての証拠が自白のみであっても同条に違反しない。2. 業務上横領罪(刑法253条)の客体について:保管されている資金の会計法上の厳密な性質にかかわらず、特定の用途に充てるべきものとして現に業務上保管されている事実があれば、横領罪の対象となる。
重要事実
被告人らは、建設省中部地方建設局の用にあてるべき予算外資金を業務上保管していたところ、これを横領したとして業務上横領罪で起訴された。弁護人は、犯罪構成要件の一部について自白以外の証拠が欠けていること、および当該横領金が会計法上の性質に照らして業務上の保管物にあたらないこと等を理由に上告した。
あてはめ
1. 憲法38条3項との関係では、自白とその他の証拠を総合して犯罪事実の真実性が保障されていると認められる。したがって、構成要件の一部が自白のみによるものであっても、判例の趣旨に照らして違憲とはいえない。2. 横領罪の客体については、当該資金が「建設省中部地方建設局の用にあてるべき予算外資金」として現に被告人らによって業務上保管されていたことが各証拠により認定できる。そのため、会計法上の性質が何であれ、業務上の占有(保管)が肯定される。
結論
被告人らの上告を棄却する。自白の補強証拠は全構成要件に及ぶ必要はなく、また本件の予算外資金は業務上横領罪の客体に該当する。
実務上の射程
補強法則(刑訴法319条2項、憲法38条3項)に関して、自白の真実性を担保するに足りる補強証拠があれば、事実の全細部について補強を要しないとする「実質説」の立場を維持する際に引用される。また、横領罪における「保管」が法律上の適法な管理のみならず、事実上の保管関係を含むことを示す実務上の指針となる。
事件番号: 昭和26(あ)500 / 裁判年月日: 昭和27年7月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白のみで有罪とすることは憲法38条3項に抵触するが、自白の真実性を保障するに足りる補強証拠が存在する場合には、当該自白を唯一の証拠として事実認定をしたことにはならず合憲である。 第1 事案の概要:被告人が犯行を認める自白をしていたが、第一審判決は当該自白のみを証拠としたのではなく、別に存…