判旨
法令の改廃により刑が廃止された場合に当たるとされるのは、当該罰則自体の廃止等により処罰の根拠が失われた場合に限られる。価格統制額を指定した告示の廃止は、単なる事実関係の変更にすぎず、刑法6条や刑訴法411条5号にいう「刑の廃止」には当たらない。
問題の所在(論点)
物価統制令等に基づき統制額を指定していた主務大臣の告示が廃止された場合、刑訴法411条5号(および刑法6条)にいう「刑の廃止」に該当するか。
規範
「刑の廃止」(刑法6条、刑訴法411条5号)とは、立法的な反省に基づき、従前は犯罪として処罰していた行為を以後処罰しないこととする法的評価の変更を指す。これに対し、経済情勢の変化等に基づき、処罰の前提となる事実関係を画定する告示等が変更・廃止されたにすぎない場合は、単なる事実の変更であり、「刑の廃止」には当たらない。
重要事実
被告人は、干麺(かんめん)の価格を定めた告示による統制額を超えた価格で取引を行ったとして、物価統制令違反に問われた。しかし、原判決後の昭和27年5月31日に、当該価格統制を定めた告示が廃止されたため、被告人側はこれが刑訴法411条5号にいう「刑の廃止」に該当し、免訴されるべきであると主張して上告した。
あてはめ
本件における干麺の価格告示の廃止は、経済状況の推移に伴う事実上の必要性に基づき、特定の物資を統制対象から外したにすぎない。これは処罰規定そのものの廃止や、当該行為を非難しないとする法的評価の変更を意味するものではない。したがって、行為当時に違反した事実がある以上、その後の告示廃止という事実関係の変更によって遡及的に処罰根拠が失われることはない。
結論
告示の廃止は「刑の廃止」に当たらない。したがって、原判決に免訴事由を認めなかった判断に誤りはなく、上告を棄却する。
実務上の射程
いわゆる「事実の変更」と「法律の変更(刑の廃止)」の区別に関する重要判例である。答案上は、法令そのものの改廃ではなく、委任命令や告示等の行政上の変更にすぎない場合に、本判例を援用して「単なる事実の変更にすぎない」と論じる際に用いる。限時法の問題としても関連する。
事件番号: 昭和26(れ)2461 / 裁判年月日: 昭和27年3月20日 / 結論: 棄却
所論A株式会社に対する昭和二〇年一一月一一日商工省工務局長第一二四九号による許可価格は、昭和一四年一〇月一八日勅令七〇三号価格等統制令七条一項但書に基く許可価格であるから、昭和二一年三月三日勅令一一八号物価統制令四六条の規定により相当の行政官庁が同令三条一項但書又は三一条の規定に依り当該価格等に付為したる許可と看做され…