価格等につき統制額ある物品をその統制額を超えて取引する目的で所持した行為は、後にその統制額が廃止された場合であつても、物価統制令第三条に違反して取引する目的で物品を所持したことに変りはないのであるから同令第一三条ノ二第一項に違反したものとして同令第三五条によつて処罰されるのであつて、かかる行為に対して前記第三条の代りに第九条ノ二を適用すべきものでないことは所論のとおりである。されば、原審が本件いさきの所持につき同令第三条を適用しないで同令第九条ノ二を適用したことは正当ではない。しかし、前記第一三条ノ二第一項は、価格統制の規定に違反して取引する目的で物品を所持する行為を禁止するものであつて、その行為の目的が第三条違反に関すると、また第九条ノ二違反に関するとを問わず等しく同令第一三条ノ二第一項の違反として同令第三五条によつてこれを処罰するのであるから、法令の適用に関する原審の前記誤は、判決に影響を及ぼさないこと明らかである。
価格等の統制ある場合の統制額違反の取引と物価統制令第九条の二の適用―判決に影響を及ぼさない法令違反の一事例
物価統制令3条,物価統制令13条ノ2,物価統制令9条ノ2
判旨
物価統制令に基づく統制額指定の告示が廃止されたことは、刑罰法規そのものの廃止には当たらないため、刑訴法(旧法363条)の「刑の廃止」には該当しない。
問題の所在(論点)
物価統制令のように、具体的制限内容を告示等の行政処分に委ねている場合において、当該告示が廃止されたことが、刑訴法上の「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当し、免訴事由となるか。
規範
特定の行政命令や告示によって具体化されていた統制内容が、事後の告示等により変更・廃止されたとしても、その根拠となる刑罰法規自体が存続している限り、それは「刑の廃止」(旧刑訴法363条2号、現刑訴法337条2号)には該当しない。いわゆる事実の変更にすぎず、法令の改廃による刑の廃止とは区別される。
重要事実
被告人は、物価統制令に違反し、指定された統制額(最高販売価格)を超える価格で鰺(あじ)およびいさきを販売、またはその目的で所持したとして起訴された。しかし、判決前に当該魚類の販売価格を制限していた具体的な告示が廃止され、自由な価格での取引が可能となった。被告人側は、これが刑の廃止にあたるとして免訴を主張した。
あてはめ
本件において、鰺およびいさきの販売価格を制限していた告示が廃止された事実は認められる。しかし、物価統制令という刑罰法規自体が廃止されたわけではない。告示の廃止は、経済状況の変化に伴う一時的な措置(事実の変更)にすぎず、行為時において違法とされた評価を過去に遡って否定する「法令の改廃」とは解されない。したがって、依然として物価統制令違反としての処罰根拠は失われない。
結論
告示の廃止は刑の廃止に当たらないため、免訴の言い渡しをなすべきではなく、有罪判決は正当である。
実務上の射程
「限時法」や「委任命令」の改廃が刑の廃止にあたるかという論点(刑法6条の解釈)において、判例が「法律上の変更」と「事実上の変更」を区別する立場(事実上の変更説)をとっていることを示す重要判例である。司法試験では、行政法規の変更が刑罰に及ぼす影響を論ずる際の規範として活用する。
事件番号: 昭和25(れ)1504 / 裁判年月日: 昭和26年5月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】物価統制令に基づき販売価格の統制額を指定した告示が廃止されたとしても、それは旧刑事訴訟法363条2号(現行刑事訴訟法337条2号)にいう「刑の廃止」には当たらない。 第1 事案の概要:被告人は、素干わかめの取引に関し、公定価格を超える価格で取引を行ったとして物価統制令違反に問われた。当該取引が行わ…