判旨
法令の改廃により処罰規定が廃止された場合、それが単なる事実上の変更にすぎないときは、刑法6条及び刑事訴訟法402条(旧363条)の「刑の廃止」には当たらない。
問題の所在(論点)
特定の物価統制に関する告示が廃止され、統制額が存在しなくなった場合、その廃止は刑事訴訟法上の「刑の廃止」に該当し、廃止前の違反行為について処罰を免れることになるか。
規範
物価統制令等のように、時の経過や社会情勢の変遷により有効期間が終了し、または告示により統制額が廃止されたとしても、その有効期間中になされた違反行為については、失効・廃止後であっても処罰を免れない。これは、当該改廃が「刑の廃止」に基づくものではなく、単なる事実上の変更に基づくものであると解されるからである。
重要事実
上告人は、奈良県告示により定められた柿の販売価格の統制額に違反したとして起訴された。しかし、その後の告示改正によって当該販売価格の統制額が廃止されたため、上告人は、本件告示の廃止が刑事訴訟法(旧法)363条にいう「刑の廃止」に該当し、免訴されるべきであると主張して、原判決の法律解釈の誤りを争った。
あてはめ
本件における奈良県告示212号による果実の販売価格統制は、後の告示361号により廃止されたが、これは物価統制令の枠組みの中で、社会経済情勢に応じた統制対象の事実上の変更にすぎない。判例の趣旨に照らせば、このような告示の廃止は「刑の廃止」には当たらない。したがって、有効期間中になされた違反行為の可罰性は、告示廃止後も失われないと解するのが相当である。
結論
告示による販売価格統制の廃止は「刑の廃止」に該当しないため、廃止前の違反行為について免訴を認めず、有罪とした原判決の法律解釈は正当である。
実務上の射程
限時法や行政上の告示による規制が撤廃された場合、それが「法律的見解の変更」か「事実上の変更」かを区別する判断枠組み。答案上は、刑法6条の「刑の変更」や免訴事由の有無を検討する際、規制の目的や社会的背景から、その改廃が過去の行為に対する道徳的・法律的評価を変えるものか、単なる状況適応的なものかを論じる際に用いる。
事件番号: 昭和25(れ)621 / 裁判年月日: 昭和25年11月28日 / 結論: 棄却
価格等につき統制額ある物品をその統制額を超えて取引する目的で所持した行為は、後にその統制額が廃止された場合であつても、物価統制令第三条に違反して取引する目的で物品を所持したことに変りはないのであるから同令第一三条ノ二第一項に違反したものとして同令第三五条によつて処罰されるのであつて、かかる行為に対して前記第三条の代りに…