労働者に、生産管理中の工場から、争議期間中の賃金支払にあてる目的をもつてほしいままに工場資材を工場外に搬出することを教唆する所為は言論の自由の範囲を逸脱し許さるべきものではない(昭和二四年(れ)第四九八号同二七年一月九日大法廷判決、昭和二三年(れ)第一三〇八号同二四年五月一八日大法廷判決参照)。
争議中の労働者の賃金支払にあてるため工場資材を工場外に搬出することを教唆するが如き言動と言論の自由
刑法235条,刑法61条,憲法21条
判旨
労働争議において、使用者の自由意思を剥奪・抑圧し、または財産権への支配を阻止して企業経営の権能をほしいままに行う「生産管理」は、正当な争議行為の範囲を逸脱し、刑法上の窃盗罪を構成し得る。
問題の所在(論点)
労働争議の一環として行われる「生産管理」に伴う資材の搬出行為が、憲法28条の保障する団体行動権の正当な行使として違法性を阻却されるか。また、かかる行為が窃盗罪を構成するか。
規範
憲法28条は団体行動権を保障するが、無制限な行使を許容するものではなく、他者の基本的人権(平等権・自由権・財産権等)に対し絶対的に優位するものではない。したがって、(1)使用者側の自由意思を剥奪・極度に抑圧し、(2)財産権に対する支配を阻止して私有財産制度の基幹を揺るがし、(3)権利者の意思を排除して企業経営の権能を行う行為は、正当な争議行為とは認められない。このような行為に基づき資材を搬出する行為は、窃盗罪の構成要件に該当する。
重要事実
労働争議中、労働者らが「生産管理」と称して工場の支配権を掌握した。その際、争議期間中の労働者の賃金支払に充てる目的をもって、権利者の意思を排除したまま、工場内の資材をほしいままに外部へ搬出した。被告人Aは、これら窃盗行為に対して幇助的な行為を行ったとして起訴された。
事件番号: 昭和27(あ)5440 / 裁判年月日: 昭和28年3月6日 / 結論: その他
犯行の用に供するため器具類を貸与して窃盗を幇助した者がその盗賍を寄蔵した場合においては、正犯者間における賍物の分配寄蔵と異なり、窃盗幇助と賍物寄蔵の二罪が成立するものと解するのを相当とする。
あてはめ
本件における生産管理は、権利者の意思を排除して企業経営の権能を代行するものであり、使用者の自由意思を抑圧し財産権の支配を阻止するものである。賃金支払目的であっても、工場資材をほしいままに搬出する行為は、私有財産制度の基幹を揺るがすものであり、正当な争議行為の限界を逸脱している。したがって、当該行為は刑法上の窃盗罪にあたり、これに加担した被告人の行為も窃盗幇助罪を構成する。また、その態様は言論の自由の範囲をも逸脱していると評価される。
結論
生産管理に伴う資材の搬出は正当な争議行為といえず、窃盗罪(またはその幇助罪)が成立する。原判決の判断は憲法28条・29条に違反しない。
実務上の射程
生産管理の違法性を明確にしたリーディングケースである。労働法上の正当な争議行為の限界(刑事免責の限界)を論じる際、財産権や経営権の侵害の程度を考慮する基準として引用する。現代では生産管理自体が稀だが、争議行為の正当性判断における「他者の人権との調和」という一般原則の根拠として機能する。
事件番号: 昭和26(あ)2987 / 裁判年月日: 昭和29年1月21日 / 結論: 棄却
窃盗共同正犯の訴因に対し、被告人が公判廷でこれを否認し、公訴事実の範囲内に属する窃盗幇助の事実を以つて弁解しており、その防禦に実質的な不利益を生ずる虞れのない場合には、訴因変更の手続をしないで、同幇助の事実を認定して差支えない。
事件番号: 昭和27(あ)1307 / 裁判年月日: 昭和28年11月10日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】関税法違反の正犯者が所有・占有する密輸出貨物の換価代金、及び密輸出を幇助した者が所有する犯罪供用物件としての漁船は、同法83条1項に基づき没収することができる。 第1 事案の概要:被告人Cは貨物を密輸出し、被告人B及びAは漁船D丸を使用してCによる貨物の密輸出を幇助した。被告人Cが占有していた密輸…