犯行の用に供するため器具類を貸与して窃盗を幇助した者がその盗賍を寄蔵した場合においては、正犯者間における賍物の分配寄蔵と異なり、窃盗幇助と賍物寄蔵の二罪が成立するものと解するのを相当とする。
窃盗幇助と賍物罪は併合罪か
刑法45条,刑法62条,刑法235条,刑法256条2項
判旨
窃盗の幇助犯が、その正犯の盗んだ盗品を寄蔵した場合には、正犯者間における盗品の分配寄蔵とは異なり、窃盗幇助罪と盗品等寄蔵罪の二罪が成立する。
問題の所在(論点)
窃盗の幇助犯が、その盗品を寄蔵した場合に、窃盗幇助罪とは別に盗品等寄蔵罪が成立するか。それとも、窃盗幇助罪に吸収される不可罰的事後行為となるか。
規範
窃盗罪の幇助犯が、その盗品を寄蔵した場合、窃盗罪の幇助という予備的・従属的な関与とは別に、盗品等寄蔵罪(刑法256条2項)という新たな法益侵害の態様が認められる。したがって、両罪は不可罰的事後行為の関係にならず、併合罪として成立する。
重要事実
被告人Bは、窃盗の犯行に供するための器具類を正犯者に貸与して窃盗を幇助した(窃盗幇助)。その後、被告人Bは、正犯者が窃取してきた盗品を自己のもとに預かり、これを寄蔵した(盗品等寄蔵)。第一審および原審はこの事実を有罪と認めたため、被告人側が上告した。
事件番号: 昭和26(あ)97 / 裁判年月日: 昭和27年9月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】盗品等の保管を容易にする等の行為によって正犯の実行を援助した場合には、盗品等保管罪の幇助犯が成立する。また、被告人にとって不利益となる方向への罪名変更の主張は、上告理由として採用されない。 第1 事案の概要:被告人が、盗品等(賍物)の寄蔵(保管)行為について、正犯の実行を容易にするなどの援助を行っ…
あてはめ
本件において被告人Bは、単に窃盗の実行を容易にしただけでなく、その後の領得過程において盗品を保管するという別個の行為を行っている。正犯者が共同正犯として盗品を分配し保管する行為は、窃盗の領得行為の延長として不可罰とされる余地があるが、幇助犯の場合は、当初の幇助行為とは別に、盗品の追求を困難にする新たな侵害が生じていると評価できる。したがって、窃盗幇助と盗品寄蔵の二罪を認めるのが相当である。
結論
被告人Bにつき、窃盗幇助罪と盗品等寄蔵罪の両罪が成立し、併合罪(刑法45条)となる。
実務上の射程
共犯者が盗品に関与した際の罪数判断において重要な指針となる。本判決は、正犯間の「分配」とは異なり、幇助犯による「寄蔵」は別罪を構成することを明示した。答案上では、盗品関与罪の成立要件(本犯関与の有無)を論じる際、本犯が共同正犯でない限り、事後的な寄蔵行為等が別罪になり得る論拠として活用できる。
事件番号: 昭和26(れ)2444 / 裁判年月日: 昭和27年4月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】窃盗罪を教唆した者が、後に当該窃盗犯人からその盗品を預かり寄蔵した場合には、賍物寄蔵罪は窃盗教唆罪に吸収されず、両罪の併合罪が成立する。 第1 事案の概要:被告人は、他人に窃盗を教唆して窃盗を実行させた後、当該実行行為によって得られた盗品(賍物)を寄蔵したとして、窃盗教唆罪および賍物寄蔵罪(現行法…
事件番号: 昭和24(れ)1506 / 裁判年月日: 昭和24年10月1日 / 結論: 破棄自判
一 從犯は他人の犯罪に加功する意思をもつて、有形無形の方法によりこれを幇助し、他人の犯罪を容易ならしむるものであつて、自ら常該犯罪行爲それ自体を實行するものではない點においては、教唆と異るところはないのである。しかし自ら強盜窃盜を實行するものについては、その窃取した財物に關して、重ねて賍物罪の成立を認めることのできない…
事件番号: 昭和39(あ)904 / 裁判年月日: 昭和39年12月17日 / 結論: 棄却
窃盗幇助をした者がその賍物を故買した場合には、窃盗罪と賍物故買の二罪が成立すると解するを相当する(昭和二四年(れ)第一五〇六号同年一〇月一日第二小法廷判決、刑集三巻一〇号一六二九頁・昭和二七年(あ)第五四四〇号同二八年三月六日第二小法廷判決、裁判集七五号四三五頁参照)。