裁判所は、その基本たる事実関係の同一性を害しない限り、公訴事実とその態様において異り、したがつて適用法条を異にする事実を認定することができるものである(昭和二三年れ第八三八号、同年一二月四日第二小法廷判決参照)。そして、所論の原判示事実は、窃盗の共犯として起訴せられ、第一審が臟物運搬と認定したのを、原審において窃盗の幇助と認定したものであり、起訴事実と原審認定事実とは、その基本たる事実関係において同一性を失わないことが明らかであるから、原判決には何等所論のような違法はない。
窃盗の共犯として起訴せられ第一審が臟物運搬と認定し原審が窃盗の幇助と認定した場合と事実の同一性
刑法60条,刑法235条,刑法256条,刑法62条,旧刑訴法291条,旧刑訴法410条18号
判旨
裁判所は、基本たる事実関係の同一性を害しない限り、起訴事実と態様が異なり、適用法条を異にする事実を認定することができる。窃盗の共犯として起訴された事実を、窃盗の幇助として認定することは、事実関係の同一性の範囲内にある。
問題の所在(論点)
裁判所が訴因(起訴事実)と異なる犯罪構成要件や態様の事実を認定する場合、どの程度の範囲であれば許容されるか(公訴事実の同一性の限界)。
規範
裁判所は、起訴事実に示された基本的事実関係の同一性を損なわない限度において、訴因と異なる事実(構成要件や適用法条が異なる事実を含む)を認定することができる。
重要事実
被告人は当初、窃盗の共犯として起訴された。これに対し、第一審は賍物(盗品)運搬罪の成立を認定し、さらに原審(二審)はこれを窃盗罪の幇助犯として認定した。弁護人は、このような事実認定の変更は違法であると主張して上告した。
あてはめ
本件において、起訴事実である「窃盗の共犯」と、原審が認定した「窃盗の幇助」は、いずれも窃盗という特定の犯罪への関与を問題とするものである。これらは基本的事実関係において同一性を失うものではない。第一審による賍物運搬の認定を経ているものの、最終的に窃盗の幇助として認定された事実は、当初の起訴事実の枠組みの中に含まれると解される。
結論
本件の認定変更は公訴事実の同一性を害しないため、適法である。したがって、本件上告は棄却される。
実務上の射程
訴因変更手続きの要否や、裁判所による縮小認定の可否を検討する際の基礎となる。特に、共同正犯から幇助犯への認定変更については、被告人の防御に実質的な不利益を与えない限り、公訴事実の同一性(現行刑訴法312条1項)の範囲内として許容されやすいことを示唆している。
事件番号: 昭和26(あ)3398 / 裁判年月日: 昭和27年10月30日 / 結論: 棄却
「被告人IはKと共謀して昭和二五年一二月二日頃堺市a町b丁目)c番地jで自転車一台及び飴一瓶を窃取した。」との窃盗の訴因を「被告人Iは同日右j附近までKと同行し同人の依頼により賍品たる自転車等をその情を知りながら大阪市d区e町f丁目g番地附近まで運搬した。」との賍物運搬の訴因に変更することは差支えない。
事件番号: 昭和25(れ)217 / 裁判年月日: 昭和25年6月13日 / 結論: 棄却
論旨第二點は、被告人Aに對する起訴事實は窃盜であるのに、原判決が賍物運搬として斷罪したのは、不告不理の原則を破るものだ、というのである。しかし賍物運搬は窃盜の事後においてこれに便益を確保する犯罪であるから、窃盜罪の公訴事實中には賍物運搬罪の事實をも含むものと解すべく、罪名に變更があつても、起訴事實の同一性を害するもので…
事件番号: 昭和24(れ)3030 / 裁判年月日: 昭和25年7月11日 / 結論: その他
原判決によれば、被告人AはBに對して判示甲方に侵入して金品を盜取することを使嗾し、以て窃盜を教唆したものであつて、判示乙商會に侵入して窃盜をすることを教唆したものでないことは所論の通りであり、しかも、右Bは、C等三名と共謀して判示乙商會に侵入して強盜をしたものである。しかし、犯罪の故意ありとなすには、必ずしも犯人が認識…