本件についてみれば、第一審において共同審理を受けた共犯者Aは、被告人BがAと共謀の上、a町所有の金円の中から判示金額を横領してこれを貸借名義で受領した事実を供述し、被告人Bも判示金円を借り受けた事実は認めている。そうして右Aの供述は、被告人Bの供述その他第一審判決挙示の各証拠と相俟つて判示Bの犯罪事実を証明するに足りるものと認められる。してみれば被告人を有罪とした第一審判決に所論のような違法又は違憲のかどなきこと、判例(昭和二四年(れ)第四〇九号、同二五年七月一九日大法廷判決)に徴して明らかである。
共同審理を受けた共犯者の供述と被告人の供述その他の証拠とを綜合して被告人の犯罪事実を認定することと憲法第三八条第三項
憲法38条3項,刑訴法319条2項,刑法60条
判旨
被告人本人の自白がなくても、相被告人の供述が被告人本人の供述等により架空でないと保障される場合には、当該供述を補強証拠として被告人の有罪を認定できる。また、憲法37条1項の「公平な裁判所」とは、裁判所の組織構成等に偏頗のおそれがないことを指し、個別の裁判内容の当不当を指すものではない。
問題の所在(論点)
1. 被告人本人の自白がない場合に、共犯者(相被告人)の供述のみによって被告人の有罪を認定することが許されるか(自白の補強法則および証拠能力の問題)。2. 裁判の内容が具体的・実質的に不当である場合、憲法37条1項の「公平なる裁判所」による裁判を受ける権利を侵害するか。
規範
1. 被告人本人の自白がない場合であっても、相被告人が被告人の犯罪事実を供述し、その供述が被告人本人の供述その他の証拠によって架空でないことが保障されている場合には、これによって被告人の有罪を認定することができる。2. 憲法37条1項にいう「公平なる裁判所」とは、裁判所の組織構成等について偏頗のおそれのない裁判所を意味し、個々の事件につき内容実質が具体的に公正妥当な裁判であることを指すものではない。
重要事実
被告人Bは、共犯者Aと共謀して町所有の金員を横領し、貸借名義で受領したとして起訴された。第一審において、共犯者AはBとの共謀および横領の事実を具体的に供述したが、被告人B自身は金員を借り受けた事実は認めつつも、共謀や横領の犯意については否認(自白なし)の状態であった。原審は、Aの供述とBの供述等を総合してBの犯罪事実を認定し、有罪とした。
あてはめ
1. 共犯者Aの供述は、被告人BがAと共謀して町所有金を横領した事実を詳述している。これに対し、被告人B自身も判示金員を借り受けた事実を認めており、Bの供述やその他の証拠がAの供述を裏付けている。したがって、Aの供述は架空のものではないという保障があり、これらを相俟ってBの犯罪事実を証明するに足りる。2. 公平なる裁判所とは組織的・客観的な中立性を指す概念であり、本件において裁判所の構成等に偏頗のおそれがある事情は認められないため、判決の内容に対する不満は憲法37条1項違反を構成しない。
結論
被告人の自白がなくても、客観的証拠や本人の一部供述により共犯者の供述の真実性が保障されるならば、有罪認定は適法である。また、本件裁判は憲法37条1項に違反しない。
実務上の射程
共犯者の供述の証拠能力と証明力に関する重要判例。実務上、共犯者の供述は補強証拠になり得るとともに、その供述の信用性が被告人自身の供述等で担保されていれば、直接証拠として有罪認定の基礎にできることを示す。憲法論については、裁判所の忌避や構成に関する議論の限界を画定する際に参照される。
事件番号: 昭和27(あ)303 / 裁判年月日: 昭和28年4月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白を補強する証拠として、被害者の供述を記載した書面(被害供述書)を用いることは許容される。 第1 事案の概要:被告人が犯行について自白をしている事案において、被害者Aの被害供述書が証拠として提出された。弁護人は、当該被害供述書では被告人の自白を補強するに足りないとして、自白のみによる処罰…