起訴状記載の各犯罪事実並びに記録に徴すると、判示第三の九〇の事実については審判の請求のなかつたことは明らかである。しからば原判決の肯認した第一審判決は審判の請求を受けない事件について判決した違法があり、右の違法は刑訴四一一条一号に該当するものというべく、原判決及び第一審判決中判示第三の九〇に関する部分はこれを破棄しなければ著しく正義に反するものと認められる。よつて同部分を破棄しその余の部分は、右部分と可分な独立した裁判であつて、これについては同条各号の事由は認められないから、これに対する上告は同四一四条、三九六条により之を棄却する。
その一部につき審判の請求を受けないで判決した違法があり、それと可分な独立した他の部分につき適法な裁判がある判決の可否
刑訴法411条
判旨
審判の請求がない事実について有罪判決を下すことは、不告不理の原則に反する重大な訴訟手続の法令違反であり、刑訴法411条1号により破棄を免れない。
問題の所在(論点)
検察官による審判の請求(起訴)がなされていない事実について、裁判所が実体判決を下すことができるか。不告不理の原則の適用の可否が問題となる。
規範
裁判所は、検察官により適法に審判の請求(起訴)がなされた事件についてのみ審理・裁判を行うことができる(不告不理の原則)。審判の請求を受けていない事件について判決することは、重大な法令違反に該当し、著しく正義に反するものとして破棄の対象となる。
重要事実
被告人Aに対し、第一審判決は判示第三の九〇の事実について罰金二千円の主文を言い渡した。しかし、判決理由の犯罪事実摘示欄には当該番号の事実記載が欠落しており、さらに起訴状や記録を確認しても、当該事実については検察官による審判の請求(起訴)が全くなされていなかった。
あてはめ
本件において、第一審判決が有罪とした「判示第三の九〇」の事実は、起訴状に記載されておらず、審判の請求があったとは認められない。裁判所は審判の請求の範囲に拘束されるため、起訴されていない事実を裁判の対象とすることはできない。したがって、審判の請求がないにもかかわらず下された本件有罪判決は、刑事訴訟の基本原則である不告不理の原則に著しく違反するものである。
結論
審判の請求を受けない事件について判決した違法があり、刑訴法411条1号に該当するため、当該部分は破棄されるべきである。
実務上の射程
裁判所の審判対象は起訴状によって画定されるという「不告不理の原則」を端的に示す判例である。答案上は、訴因変更が必要な事態において裁判所が変更手続を経ずに判決した場合などの、手続的違法の重大性を論じる際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和27(あ)2265 / 裁判年月日: 昭和27年12月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】国税犯則事件において、起訴前通告処分の事実は、被告人が証拠として同意した通告書の写しや、通告を受けたが納付できなかった旨の検察官面前調書により認定することができる。 第1 事案の概要:被告人が国税犯則事件で起訴されたが、弁護人は起訴前に通告処分がなされていなかったと主張した。記録上、第一審において…