所論臨時物資需給調整法(昭和二一年法律第三二号以下旧法という)附則中「昭和二十三年四月一日」を「昭和二十四年四月一日」に改めた「臨時物資需給調整法の一部を改正する法律」(昭和二三年三月三一日法律第一六号、以下新法という)は、旧法の失効時期を延期して旧法の内容をそのまゝ新法の内容として存続せしめたものに外ならないのであるから、この法律が効力を発生した以後においては、旧法の内容は新法の内容として法律上の効力を有するものと言わなければならない。従つて右新法に基いて同日以後に制定された石油製品配給規則(昭和二四年三月三一日共同省令一号、昭和二四年四月一日施行、論旨にいう新規則)もまた有効であること多言を要しない。
法律の日附以後に公布された臨時物資需給調整法改正法に基き制定された石油製品配給規則(昭和二四年三月三一日共同省令一号)の効力
石油製品配給規則(昭和24年3月31日共同省令1号),臨時物資需給調整法(昭和21年法律32号),臨時物資需給調整法一部改正法律(昭和23年法律16号)
判旨
時限法の有効期間を改正により延長した場合、改正後の法律は旧法の内容を維持しつつ有効に存続する。そのため、有効期間延長後の行為に対して罰則を適用することは、憲法39条の遡及処罰禁止に抵触せず、適法である。
問題の所在(論点)
時限法の有効期間が改正により延長された場合において、延長後の期間内に行われた違反行為を処罰することが、憲法39条(実行時に適法であった行為の処罰禁止)に抵触するか。
規範
法律の有効期間を定める規定を改正し、その失効時期を延期する場合、当該改正法は旧法の内容をそのまま新法の内容として存続させるものである。したがって、改正法が有効に施行された後は、旧法の内容は新法の内容として法律上の効力を有し、その施行後の行為に対して罰則を適用することは憲法39条に違反しない。
重要事実
事件番号: 昭和25(あ)894 / 裁判年月日: 昭和26年5月15日 / 結論: 棄却
所論の臨時物資需給調整法附則第二項(昭和二三年三月三一日法律一六号、同二四年三月三一日法律二一号による改正後のもの)及び昭和二四年七月一五日農林省令第六八号(加工水産物配給規則一部改正)同二五年三月二七日同省令第二七号(同規則廃止)各附則二項は同法律及び同規則改正廃止前に行われた違反行為に対しては、その改正廃止後も改正…
被告会社は、臨時物資需給調整法に基づく石油製品配給規則に違反し、昭和24年2月から昭和25年2月にかけて、法定の配給割当公文書と引き換えずに石油製品を16回にわたり譲り受けた。当該法律は本来の失効期限前に改正法(昭和23年法律第16号)によって有効期間が延長されていたが、弁護人は、改正法の施行時期や手続きを理由に、実行時の行為は無罪であり処罰は憲法39条に反すると主張して上告した。
あてはめ
本件における改正法(新法)は、旧法の失効時期を昭和23年4月1日から昭和24年4月1日へと延期したものである。これは旧法の内容をそのまま新法として存続させたものであり、新法が公布・施行された昭和23年4月9日以降において有効な法律としての効力を有する。被告人の行為は、この有効に施行された新法およびこれに基づく石油製品配給規則に違反するものである。実行時において法的な効力を有する規範に違反している以上、これを処罰することは「実行の時に適法であつた」行為を処罰するものとはいえない。
結論
被告人の行為は有効な法令に違反する犯罪を構成し、処罰は適法である。憲法39条違反の主張は前提を欠き、理由がない。
実務上の射程
時限法の有効期間延長に伴う遡及処罰の成否が争点となる事案に適用される。特に、法改正が失効直前に行われた際の空白期間の有無や、延長後の規範の連続性を基礎付ける理論として活用できる。答案上は、憲法39条の「実行の時に適法であつた」か否かの判断において、法令の形式的変更があっても実質的な規範の同一性が維持されていることを説明する際に引用する。
事件番号: 昭和28(あ)2873 / 裁判年月日: 昭和30年4月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法律が廃止された後も、当該法律の附則に基づき、廃止前の違反行為を処罰することは、憲法上の適正手続や刑罰不遡及の原則に反せず合憲である。 第1 事案の概要:被告人が臨時物資調整法違反の罪で起訴されたが、同法は有効期間の満了により廃止された。しかし、同法附則第2項但書には、法の失効後も失効前の行為につ…
事件番号: 昭和27(あ)4912 / 裁判年月日: 昭和28年11月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】臨時物資需給調整法に基づく石油製品配給規則等が失効した場合であっても、法律の附則に「失効前の行為に対する罰則の適用については、なおその効力を有する」旨の経過規定があるときは、刑法6条(刑の廃止)には当たらず、処罰は維持される。 第1 事案の概要:被告人は、当時の「石油製品配給規則」等に違反する行為…
事件番号: 昭和25(あ)3105 / 裁判年月日: 昭和26年9月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法律が定める失効期限前に改正案が国会で可決され成立したならば、その公布が失効期限後であっても、当該法律が失効したことにはならない。また、省令の改正により罰則の根拠が変更された場合でも、経過規定により従前の行為に対する処罰を維持することは、憲法31条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は、昭和2…
事件番号: 昭和27(あ)2831 / 裁判年月日: 昭和27年11月28日 / 結論: その他
所論は大赦にかからない灯油等についてもその後の統制廃止により刑の廃止があつたと主張するのであるが、昭和二七年三月三一日法律第二三号国際的供給不足物資等の需給調整に関する臨時措置に関する法律の附則四項によると、臨時物資需給調整法がなおその効力を有する間にした行為に対する罰則の適用については同法はその失効の日後もなおの効力…