判旨
法律が定める失効期限前に改正案が国会で可決され成立したならば、その公布が失効期限後であっても、当該法律が失効したことにはならない。また、省令の改正により罰則の根拠が変更された場合でも、経過規定により従前の行為に対する処罰を維持することは、憲法31条に違反しない。
問題の所在(論点)
法律の有効期間を延長する改正案が期限内に成立したが、公布が期限後となった場合に、当該法律は失効するか。また、省令の改廃時に経過規定を設けて行為時の罰則を適用することは憲法31条に違反するか。
規範
法律の失効期限を延長する改正案が、当該期限内に両議院で可決・成立した場合には、その法律は失効することなく継続するものと解する。また、法令の改廃に伴い、施行前の行為についてなお従前の例により処罰する旨の経過規定を置くことは適法であり、刑の廃止があったとは認められない。
重要事実
被告人は、昭和24年6月10日頃、臨時物資需給調整法(以下「調整法」)に違反する行為を行った。調整法は当初、昭和23年4月1日をもって失効する旨の附則があったが、同年3月31日に期限を1年延長する改正法律案が成立。しかし、この改正法の公布は同年4月9日であった。その後、再度の改正により期限はさらに昭和25年4月1日まで延長された。また、その後の農林省令改正に際しては「施行前の行為についてはなお従前の例による」との経過規定が設けられていた。被告人側は、改正法の公布の遅れによる調整法の失効、および省令改正による刑の廃止を理由に、憲法31条違反を主張して上告した。
あてはめ
まず、調整法の期限延長について、昭和23年4月1日の期限前に改正案が両議院で可決・成立している以上、公布が同月9日と遅れたとしても、4月1日から8日までの拘束力については格別、法律自体が失効したとはいえない。本件犯行時の昭和24年6月においては、その後の改正により有効に存続していたといえる。次に、省令改正に伴う処罰の可否については、附則において施行前の行為に対し従前の例による旨の経過規定が明示されている。これにより、施行前に犯した統制違反行為は、施行後であってもなお処罰を免れないものと解される。したがって、刑の廃止があったとは認められず、憲法31条違反の前提を欠く。
結論
本件犯行当時、調整法は有効に存続しており、かつ省令改正後の経過規定により処罰が可能であるから、原判決が憲法31条に違反するとの主張は理由がない。
事件番号: 昭和28(あ)2873 / 裁判年月日: 昭和30年4月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法律が廃止された後も、当該法律の附則に基づき、廃止前の違反行為を処罰することは、憲法上の適正手続や刑罰不遡及の原則に反せず合憲である。 第1 事案の概要:被告人が臨時物資調整法違反の罪で起訴されたが、同法は有効期間の満了により廃止された。しかし、同法附則第2項但書には、法の失効後も失効前の行為につ…
実務上の射程
法令の有効期間の延長手続と効力継続の関係、および「従前の例による」という経過規定の有効性を認めた事例である。法令の改廃に伴う有利な後法の適用(刑法6条)の例外として、経過規定による処罰の維持が合憲的に認められる実務上の根拠として位置付けられる。
事件番号: 昭和27(あ)1337 / 裁判年月日: 昭和28年11月24日 / 結論: 棄却
所論臨時物資需給調整法(昭和二一年法律第三二号以下旧法という)附則中「昭和二十三年四月一日」を「昭和二十四年四月一日」に改めた「臨時物資需給調整法の一部を改正する法律」(昭和二三年三月三一日法律第一六号、以下新法という)は、旧法の失効時期を延期して旧法の内容をそのまゝ新法の内容として存続せしめたものに外ならないのである…
事件番号: 昭和25(れ)1046 / 裁判年月日: 昭和26年2月27日 / 結論: 棄却
所論昭和二五年三月二七日農林省令第二七号附則の趣旨は加工水産物配給規則廃止前に行われた違反行為に対しては同規則廃止後も廃止前に行われた違反行為の罰則に関する範囲においては、これを廃止しない趣旨であつて、一旦廃止して更に罰則を設けるという趣旨でない故所論違憲論は前提を欠き採用できない。
事件番号: 昭和25(あ)1669 / 裁判年月日: 昭和27年3月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】限時法の性質を有する法令が廃止された場合であっても、附則に「改正前の行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による」旨の経過規定があるときは、刑の廃止(刑訴法411条5号等)には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が臨時物資需給調整法に基づく薪炭需給調整規則に違反する行為を行ったが、その後…
事件番号: 昭和25(あ)894 / 裁判年月日: 昭和26年5月15日 / 結論: 棄却
所論の臨時物資需給調整法附則第二項(昭和二三年三月三一日法律一六号、同二四年三月三一日法律二一号による改正後のもの)及び昭和二四年七月一五日農林省令第六八号(加工水産物配給規則一部改正)同二五年三月二七日同省令第二七号(同規則廃止)各附則二項は同法律及び同規則改正廃止前に行われた違反行為に対しては、その改正廃止後も改正…