判旨
憲法25条1項は、すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を保障しているが、物価庁告示による紙類の統制額の定め方が不当であるとしても、直ちに同条項に違反するものではない。
問題の所在(論点)
物価庁告示による紙類の統制額の設定が、実情に合わず不当に低い場合、憲法25条1項(生存権)に違反して無効となるか。
規範
憲法25条1項の規定は、国に対して国民が健康で文化的な最低限度の生活を営み得るように政策を講ずべき責務を課したものであり、具体的な価格統制の妥当性といった立法政策的判断については、直ちに同条項違反の問題を生じさせるものではない。
重要事実
被告人らは、紙類の販売に際し、当時の物価庁告示で定められた統制額を超えた価格で取引を行った。これに対し被告人側は、当該告示の制定時期が遅く、既に原料費や人件費が2倍以上に暴騰していた時期に低い統制額を維持していたことは、国民の生活を脅かすものであり、憲法25条1項に違反して無効であると主張した。
あてはめ
被告人の主張は、要するに紙類の統制額の定め方が時機に遅れ、実情に合致せず不当であるという点にある。しかし、このような統制額の当・不当の議論は、政策的な判断の是非を問うものに過ぎない。憲法25条1項の法意に照らせば、価格統制の内容が実情に合わないとしても、それによって直ちに憲法違反の評価を受けるものではないと解される。
結論
物価庁告示による価格統制は憲法25条1項に違反せず、適憲である。
実務上の射程
生存権(25条)のプログラム規定説的な性格を示唆する初期判例の一つである。具体的施策の当不当は立法府・行政府の裁量に委ねられており、裁判所が価格設定の妥当性を憲法問題として審査することには消極的であるという、後年の堀木訴訟等に繋がる裁量論の萌芽として理解できる。
事件番号: 昭和26(あ)2735 / 裁判年月日: 昭和27年12月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法25条1項は、国に対して国民一般の生活を保障すべき国政上の任務を課したものであり、個々の国民が国家に対して具体的・現実的な権利を直接取得することを認めたものではない。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件における上告審において、憲法違反を主張した事案。弁護人は、憲法25条1項の法意に反する事態が…