判旨
憲法25条1項は国家の概括的な国政上の責務を定めたものであり、個々の国民に対して具体的・現実的な権利を直接付与するものではない。また、個別の量刑において他の類似の犯人と比較して重い刑が科されたとしても、個別の情状に基づく適切な量定である限り、憲法14条の平等原則には違反しない。
問題の所在(論点)
1. 憲法25条1項の規定に基づき、個々の国民は国家に対して具体的・現実的な請求権を直接有するか。 2. 犯情が類似する他の犯人と比較して重い刑を科すことは、憲法14条の平等原則に違反するか。
規範
憲法25条1項は、国家が国民一般に対して健康で文化的な最低限度の生活を営ませる責務を負うという国政上の任務を規定したものであり、個々の国民に具体的・現実的な権利を直接与えるものではない。また、憲法14条の平等原則は、人種や社会的身分等に基づく不当な差別を禁ずる趣旨であり、事実審が犯人の性格、年齢、境遇、犯罪の情状等を総合的に考慮して行う適切な量刑において、類似の事案より重い罰が科されることは、個別の妥当性を追求する結果として許容される。
重要事実
被告人が上告理由において、(1)裁判の遅延による憲法37条1項違反、(2)生活困窮等の状況から憲法25条に基づく具体的権利の侵害、および(3)他の犯人と比較して重い刑が科されたことが憲法14条の平等原則に反する旨を主張した事案である。判決文からは被告人が具体的にどのような犯罪行為に及び、どのような量刑を受けたかという詳細は不明である。
あてはめ
1. 憲法25条1項については、同条が国家の概括的な責務を宣明したにとどまるため、被告人が主張するような具体的・現実的な権利を導き出すことはできない。2. 憲法14条については、裁判所は犯人の性格、年齢、境遇、情状等を個別に審査して刑を量定するものである。したがって、ある側面で他の犯人と類似していても、全体的な情状判断の結果として重く処罰されることがあり得るのは、個別具体的な妥当性を図る刑事裁判の性質上当然であり、不当な差別には当たらない。
結論
憲法25条1項は具体的権利を付与するものではなく、また個別の情状に基づく量刑の差異は憲法14条に違反しないため、上告を棄却する。
実務上の射程
生存権の法的性格につき「プログラム規定説(ないし抽象的権利説)」を採用した初期の重要判例。25条に基づく具体的請求を否定する文脈で引用可能。また、量刑の個別化と14条の関係についても、合理的理由(個別の情状)に基づく差異であれば平等原則に反しないという理屈として活用できる。
事件番号: 昭和26(あ)1415 / 裁判年月日: 昭和27年2月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法25条1項の法意について、生存権の規定は国の政治的・道徳的な義務を規定したものであり、個々の国民に具体的権利を付与したものではないとする解釈を示し、量刑の不当を憲法違反と主張する上告を退けた。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件における量刑の不当を理由として、それが憲法25条1項の法意に反し憲…