判旨
憲法25条1項の法意について、生存権の規定は国の政治的・道徳的な義務を規定したものであり、個々の国民に具体的権利を付与したものではないとする解釈を示し、量刑の不当を憲法違反と主張する上告を退けた。
問題の所在(論点)
刑事裁判における量刑の不当を憲法25条1項違反として上告理由(刑事訴訟法405条)とすることができるか。すなわち、同条項の法的性質および個別の権利性(プログラム規定説の可否)が問題となった。
規範
憲法25条1項は、すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有することを規定しているが、これは国に対して、国民がそのような生活を営み得るように国政を運営すべき政治的・道徳的義務を課したものであり、個々の国民に対して直接に具体的な権利を付与したものではない。
重要事実
被告人が刑事事件における量刑の不当を理由として、それが憲法25条1項の法意に反し憲法違反であると主張して上告を申し立てた事案である。判決文からは、具体的な罪名や原判決の詳細は不明である。
あてはめ
弁護人が主張する憲法違反の実質は量刑の不当にすぎない。また、憲法25条1項の解釈について、先行する最大判昭和23年9月29日の趣旨に照らせば、同条項は国の指針を定めたものであり、具体的な権利侵害を直接構成する根拠とはならない。本件記録を精査しても、刑訴法411条を適用して原判決を破棄すべき顕著な正義に反する事情も認められない。
結論
本件上告は刑訴法405条の上告理由に当たらないため、棄却される。
実務上の射程
生存権のプログラム規定説を維持した判例であり、憲法25条を根拠に直接的な給付や減刑を求めることの困難さを示す。もっとも、後の堀木訴訟等により立法府の裁量統制の枠組みが発展しているため、答案上は「具体的な権利性は認められないが、著しく不合理な場合には司法審査の対象になり得る」とする前段階の議論として位置づける。
事件番号: 昭和27(あ)28 / 裁判年月日: 昭和28年5月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法25条1項の生存権規定は、個別の犯罪行為を正当化し、または実刑を免れさせる根拠となるものではない。生活苦という主観的・個人的事情があっても、直ちに違法性阻却や責任阻却が認められるわけではない。 第1 事案の概要:被告人が生活のためにやむを得ず犯罪(具体的な罪名は判決文からは不明)を犯した。弁護…