仮りに所論のごとく濁酒にならない中に税務署員に発見され、従つてその発覚当時(昭和二三年一一月一七日)濁酒製造の未遂であつたとしても、本件起訴当時(昭和二三年一二月二三日)までには、時の経過により自然に濁酒となり、従つて、判示仕込み行為の当然の結果として既遂の段階に達していたこと明白であるから(なお記録五〇丁の次に添附された昭和二三年一二月二二日附押収濁酒八斗六升買受受取書参照)、結局原判決には所論の違法も認められない。
発覚当時濁酒製造の未遂であつたものが起訴当時までに自然と濁酒となつた場合と既遂の認定
酒税法40条,酒税法3条,酒税法12条
判旨
酒類の製造における既遂時期は、発覚時に未遂であっても、起訴時までに自然の経過によって目的物となったことが明白であれば、仕込み行為の結果として既遂に達したものと認められる。また、酒税法の罰則規定が違反数量に応じて重くなることは、経済的能力による差別ではなく、法の下の平等に反しない。
問題の所在(論点)
1. 密造酒製造において、発覚時に未遂であっても起訴時までに自然に生成された場合、既遂罪が成立するか。2. 違反数量が大きい者に対し重い刑罰を科す酒税法の規定は、憲法14条に違反するか。
規範
密造酒製造罪の既遂時期については、仕込み行為後、自然の経過によって酒類が生成される場合には、その自然の結果として既遂の段階に達したものと認めるのが相当である。また、違反数量等に応じて刑罰を加重する規定は、犯情に応じて等しく刑罰を科すものであり、憲法14条の平等原則に反する差別待遇には当たらない。
重要事実
被告人は、免許を受けずに濁酒(どぶろく)を製造したとして、旧酒税法違反で起訴された。犯行発覚時の昭和23年11月17日時点では、仕込みの段階にあり濁酒には至っていなかった(未遂の状態)。しかし、起訴時である同年12月23日までの時の経過により、仕込み行為の当然の結果として、押収された液体は自然に濁酒へと変化していた。弁護人は、発覚時に未遂であったことや、罰則規定が貧富による差別であり違憲であること等を理由に上告した。
あてはめ
1. 既遂時期について:被告人は濁酒の仕込み行為を行っており、発覚から起訴までの約1ヶ月の間に、その仕込み行為の当然の結果として自然に濁酒が生成されたことが記録(押収濁酒の受取書等)から明白である。したがって、起訴時において既遂の段階に達していると認められ、未遂罪にとどまるとの主張は採用できない。2. 平等原則について:当該規定は、違反数量が大きい者(経済的能力が高い者)に対して刑罰を軽くしている事実はなく、むしろ犯情に応じて等しく刑罰を加重している。これは何人に対しても等しく適用されるものであり、貧富による差別待遇とはいえない。
結論
1. 仕込み行為の当然の結果として自然に酒類が生成された以上、既遂罪の成立を認めた原判決に違法はない。2. 酒税法の罰則規定は憲法14条に違反しない。
実務上の射程
製造罪のような継続的変化を伴う犯罪において、行為後の自然な結果発生を既遂として評価する判断枠組みを示している。また、租税法規に付随する罰則において、脱税額や違反規模という客観的事態に基づく刑罰の格差が、合理的な差別として許容されることを確認した事例である。
事件番号: 昭和25(あ)2976 / 裁判年月日: 昭和26年8月9日 / 結論: 棄却
単にアルコールを水で稀釈した本件被告人の行為は酒類の製造に当らないと主張するが、原判示のごとくそれが「雑酒の製造」に当ると認めるを相当とする。