単にアルコールを水で稀釈した本件被告人の行為は酒類の製造に当らないと主張するが、原判示のごとくそれが「雑酒の製造」に当ると認めるを相当とする。
アルコールを水で稀釈する行為と「雑酒の製造」
酒税法12条,酒税法60条,酒税法2条
判旨
酒税法等に規定される「酒類の製造」の意義について、既存の酒類に何らかの加工を施す行為であっても、その実態に照らして「雑酒の製造」に該当すると認められる場合には、酒類の製造罪が成立する。
問題の所在(論点)
免許を受けずに酒類を生成する行為が、酒税法上の「酒類の製造」(特に雑酒の製造)に該当するか。
規範
既存の物品を原料として加工を加え、新たな性質を有する飲食物(酒類)を作り出す行為は、酒税法等の規制対象となる「製造」に該当する。特に、具体的な製法が法定の他の酒類に分類されない場合であっても、アルコールを含有する飲料を作り出す実態があれば「雑酒の製造」として把握される。
重要事実
被告人は、酒類の製造免許を受けることなく、何らかの物品を原料として酒類を生成したとして、旧酒税法違反(無免許製造)の罪に問われた。被告人側は、当該行為は既成の酒類を利用した加工に過ぎず、法にいう「製造」には当たらないと主張して上告した。
あてはめ
判決文では被告人の具体的な加工工程の詳細は明示されていないが、原判決が認定した事実関係に基づき、被告人が行った行為は単なる既存酒類の消費や混和の域を超え、新たな酒類(雑酒)を創出したものと評価された。被告人の主張する「製造に当たらない」という論理は、形式的な加工の有無ではなく、生成された物品が「雑酒」としての実体を備えているという原審の判断を覆すに足りるものではない。
結論
被告人の行為は「雑酒の製造」に該当すると認められ、無免許での酒類製造罪の成立を認めた原判決は正当である。
実務上の射程
酒税法における「製造」の概念は広範であり、原料から酒を造る行為だけでなく、既存の酒類を加工して別種の酒類(雑酒)を作り出す行為も含まれることを示唆している。答案上は、罪刑法定主義の観点から「製造」の定義を論じる際、実質的な生成行為の有無を判断基準とするための基礎的な根拠として参照しうる。
事件番号: 昭和25(れ)31 / 裁判年月日: 昭和25年5月12日 / 結論: 棄却
昭和二四年法律第四三號による改正前の酒税法第一四條第六〇條の罪は、政府の免許を受けないで酒類を製造することによつて成立するものであつて、その製造が自家用の目的に出でたると販賣の目的に出でたるとは罪の成否並びにその決定刑に何等の關係のないところである。