免許を受けないで濁酒を製造したという起訴に対し、審理の結果雑酒を製造したものと認定するには、訴因の変更をする必要はない。
訴因の変更を要しない一事例
酒税法60条,刑訴法312条
判旨
無免許で酒類を製造した酒税法違反被告事件において、起訴状記載の目的物が「濁酒」であったものを、審理の結果「雑酒」と認定しても、直ちに訴因変更手続を要するものではない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法312条1項の訴因変更の要否に関し、起訴状に記載された犯罪の客体(酒類の種類)と認定された事実が異なる場合、訴因変更の手続を経ずに異なる事実を認定することが許されるか。
規範
訴因の記載に相違があったとしても、それが実質的に犯罪の構成要件を画する事項において同一の範囲内にとどまり、被告人の防御に実質的な不利益を及ぼさない場合には、訴因の変更を要することなく裁判所は事実を認定することができる。
重要事実
被告人が免許を受けずに酒類を製造したとして酒税法(昭和27年当時は60条)違反で起訴された際、起訴状には製造された目的物が「濁酒」と表示されていた。しかし、第一審ないし控訴審の審理の結果、実際に製造されたのは「雑酒」であったと認定された。
あてはめ
本件における無免許酒類製造の罪において、目的物が「濁酒」であるか「雑酒」であるかは、酒税法違反という構成要件の核心部分を左右する本質的な相違とはいえない。起訴状に示された「無免許での酒類製造」という基本的事実に変わりはなく、目的物の分類の認定に差異が生じたとしても、直ちに被告人の防御に不測の不利益を生じさせるものとは認められない。
結論
起訴状に「濁酒」と記載された目的物を、審理の結果「雑酒」と認定することは、直ちに訴因の変更を必要とするものではない。
実務上の射程
本判決は、訴因変更の要否に関する初期の判断を示すものである。実務上は、犯罪の同一性を害さず、かつ被告人の防御に具体的な支障がない「軽微な事実の相違」については、訴因変更を経ずとも認定が可能であることを示唆している。ただし、現代の訴因変更論(識別説・争点明確化説)に照らせば、法定刑の差異や防御の準備状況により、慎重に判断すべき場面も多いことに留意が必要である。
事件番号: 昭和27(あ)5235 / 裁判年月日: 昭和28年4月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公訴事実と原審認定事実が同一の事実関係と認められる場合には、訴因変更の手続きを要さず、そのまま判決を下すことが可能である。 第1 事案の概要:被告人が起訴された公訴事実に対し、第一審または原審(控訴審)において、検察官が主張した訴因とは異なる事実が認定された。弁護人は、この認定が訴因変更を経ずにな…