判旨
濁酒の密造行為を処罰する規定は、個人の生存権を保障する憲法25条に違反するものではなく、公共の福祉の観点から合憲である。
問題の所在(論点)
濁酒の密造行為を処罰する規定が、憲法25条(生存権)に違反し、違憲とならないか。
規範
憲法25条は、国の社会的使命として生存権の保障を規定したものであるが、特定の法規制が同条に直ちに違反するか否かは、当該規制の目的や公共の福祉との適合性により判断される。個人の経済的活動や飲食物の製造・流通に関する規制が、公共の利益を目的とするものである限り、直ちに同条違反とはならない。
重要事実
被告人が酒税法(又は関連法規)の規定に違反して濁酒(どぶろく)を密造し、刑事罰の適用を受けた事案。被告人側は、自己消費等を目的とした濁酒の密造を処罰することは、生存権を保障する憲法25条に違反するとの主張を行った。
あてはめ
判旨は、本件のような濁酒密造犯人を処罰することが憲法25条に違反するという主張に対し、これまでの最高裁判例の趣旨に照らせば明らかに不当であると判断した。これは、酒税の確保や公衆衛生の維持という公共の福祉に基づく規制目的が正当であり、その手段としての刑事罰が生存権を侵害するものとは言えないことを前提としていると解される。
結論
濁酒密造を処罰する規定は憲法25条に違反せず、合憲である。
実務上の射程
生存権(25条)のプログラム規定説的性格や、国の立法裁量を肯定する文脈で活用できる。また、酒類等の製造規制が公共の福祉により正当化されることを示す簡潔な先例として、経済的自由や生存権の制約の限界に関する答案構成に引用可能である。
事件番号: 昭和27(あ)2138 / 裁判年月日: 昭和28年10月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法25条1項が保障する生存権の規定は、経済的な困窮等を理由とする犯罪行為を正当化し、あるいは刑罰を免れさせる法的根拠にはならない。 第1 事案の概要:被告人は、焼酎の原料たる醪(もろみ)を密造した等の罪に問われた。これに対し被告人側は、当時の極めて貧困な生活状況に鑑み、最低限度の生活を営むための…