酒税法違反事件において、共犯者の一人に対してした告発は他の共犯者にも効力がある。
共犯者の一人に対してした告発の他の共犯者に対する効力
刑訴法238条,国税犯則取締法17条
判旨
憲法25条1項は国に対し国民の生活を保障する政治的・概括的責務を課すにとどまり、個別の国民に具体的権利を付与するものではない。また、自白の補強証拠は、犯罪事実の全部を裏付ける必要はなく、自白の真実性を保障できる程度で足りる。
問題の所在(論点)
1. 憲法25条1項に基づき、生活困窮を理由とした酒類密造の権利が認められるか、またそれを処罰する酒税法は違憲か。 2. 自白にかかる事実(本件では密造数量)の一部について直接的な補強証拠がない場合、憲法38条3項に違反するか。
規範
1. 憲法25条1項の法意は、国家が国民一般に対して「健康で文化的な最低限度の生活」を営ませる責務を負担し、これを国政上の任務とすべきことを宣言したものであって、個々の国民に対して直接に具体的・現実的な権利を付与するものではない。 2. 憲法38条3項の補強証拠は、自白にかかる犯罪構成事実の全部を漏れなく裏付ける必要はなく、自白にかかる事実の真実性を保障し得るものであれば足りる。
重要事実
被告人らは酒類を密造したとして酒税法違反で起訴された。被告人らは、自らの行為が生活の最低条件を確保するための生存権(憲法25条)に基づく正当な権利行使であると主張して酒税法の違憲性を争った。また、証拠関係において、酒類の密造事実自体には補強証拠が存在したが、密造の「数量」については被告人らの自白のみによって認定されていたため、補強法則(憲法38条3項)に違反すると主張して上告した。
あてはめ
1. 憲法25条1項は国家の概括的責務を定めたプログラム的規定にすぎない。したがって、仮に被告人らの行為が生活維持のために行われたとしても、同条から直ちに密造の権利が導かれるわけではなく、これを罰する酒税法は違憲ではない。 2. 被告人らの密造の事実自体を認める補強証拠が存在する以上、その一部である数量について自白のみで認定したとしても、自白全体の真実性は保障されているといえる。したがって、構成事実の細部すべてに独立した補強証拠を要するものではない。
結論
1. 酒税法は憲法25条に違反しない。生活維持のための密造であっても処罰は免れない。 2. 密造の事実自体に補強証拠がある以上、数量の認定が自白のみによるものであっても憲法38条3項には違反しない。
実務上の射程
生存権の法的性格についてはプログラム規定説を採る基本判例である。刑事手続においては、実質説(真実性保障説)の立場から補強証拠の範囲を画定しており、重要犯罪事実(密造の存否)に補強があれば、細部(数量)には不要とする実務の指針となる。
事件番号: 昭和25(あ)223 / 裁判年月日: 昭和25年7月11日 / 結論: 棄却
酒税法は違憲ではない。