酒税法は違憲ではない。
酒税法の合憲性(第二五條)
憲法25條,酒税法1條
判旨
憲法25条1項は、国に対して国民一般の健康で文化的な最低限度の生活を営ませる責務を課すものであり、個々の国民に具体的現実的な権利を付与するものではない。酒類の配給不足を理由とする無免許製造は、刑法37条の「現在ノ危難ヲ避クル為メ己ムコトヲ得ザル行為」に該当しない。
問題の所在(論点)
1. 憲法25条1項に基づき、酒類の配給制限を違憲として具体的権利を主張できるか。 2. 配給制度下での酒類の不足を理由とする無免許製造が、刑法37条の緊急避難(現在ノ危難を避けるためのやむを得ない行為)に該当するか。
規範
憲法25条1項は、国家に対し国民が健康で文化的な最低限度の生活を営めるよう配慮すべき国政上の任務を課した規定であり、個々の国民に対して直接に具体的・現実的な権利を付与するものではない。また、刑法37条の緊急避難は、自己または他人の生命、身体、自由または財産に対する現在の危難を避けるためにやむを得ず行われた行為であることを要する。
重要事実
被告人は、酒税法等により酒類の製造・販売が制限され、年間わずか一升にも満たない配給しか受けられない状況下で、自家用として酒類を無免許で製造した。弁護人は、酒類は生活必需品であり、配給不足は最低限度の生活を害する憲法25条違反であること、および当該製造行為は緊急避難(刑法37条)に当たることを主張して上告した。
あてはめ
1. 憲法25条1項の法意は国家の概括的な責務を定めたに過ぎず、個々の国民が直ちに具体的権利を有するものではない。また酒税法は造石高を制限する法律ではなく、生存権を侵害するものではない。 2. 配給が不足しているという主観的な不満から、恣意的に自家用酒を製造する行為は、生命・身体等に対する「現在の危難」を避けるための「やむを得ない行為」とは認められない。
結論
酒税法は憲法25条に違反せず、配給不足を理由とする自家用酒の無免許製造について緊急避難の成立は認められないため、被告人を処罰した原判決は正当である。
実務上の射程
生存権のプログラム規定説的側面を示すリーディングケースであり、公法上の権利性否定の根拠として使える。また、経済的困窮や物資不足を理由とする犯罪における緊急避難の成立範囲を極めて厳格に解する実務指針となる。
事件番号: 昭和28(あ)1070 / 裁判年月日: 昭和30年2月8日 / 結論: 棄却
酒税法違反事件において、共犯者の一人に対してした告発は他の共犯者にも効力がある。