いやしくも醪を製造しようとして、これに要する諸般の手段を完遂した以上、未だその醗酵作用が完成して居なかつたとしても、酒税法舊第六四條第一項第一號にいわゆる「醪ヲ製造シタル者」に該當する。
酒税法舊第六四條第一項第一號にいわゆる「醪ヲ製造シタル者」の意義
酒税法16條本文,酒税64條1項本文1號
判旨
酒類製造罪の既遂時期について、醪(もろみ)を製造するに要する諸般の手段を完遂した以上、発覚時に発酵作用が未だ完成していなかったとしても、犯罪の処罰要件を具備すると解すべきである。
問題の所在(論点)
酒税法(又は当時の適用法令)違反における酒類製造罪において、製造過程の客体が完全に完成(発酵)していない場合であっても、製造行為の既遂が認められるか。
規範
製造罪の既遂は、対象物の生成を完了することのみならず、その生成に至るために必要な一切の作為を終了し、あとは自然の経過によって目的物が完成する状態に置かれた時点をもって判断すべきである。
重要事実
被告人が、酒類の原料となる醪(もろみ)を密造しようとし、その製造に要する諸般の手続き・手段をすべて終えた。しかし、当該犯行が発覚した時点では、手段完了から一日を経過したに過ぎず、醪は未だ完全に発酵していない状態であった。弁護側は、発酵の未完成を理由に既遂の成立を争った。
あてはめ
被告人は醪を製造するに要する諸般の手段をすべて終了している。醪製造に要する諸般の手段を完遂した以上、その後の発酵は時の経過という自然作用に委ねられているに過ぎない。したがって、発覚時に発酵作用が未完成であったとしても、製造行為としての実行行為は既に完了しており、既遂としての処罰要件を満たしていると評価される。
結論
醪製造に必要な手段を完遂した以上、発酵未完了であっても製造罪の既遂が成立する。
実務上の射程
製造罪全般において、物理的な完成(本件では完全な発酵)を待たずとも、作為による工程が全て終了し自然の推移に委ねられた段階で既遂を認める考え方(「手段完遂説」的な構成)を示す。司法試験においては、実行行為の完了と既遂時期が問題となる場面、特に自然的な生成プロセスを伴う製造行為の論証に有用である。
事件番号: 昭和24(れ)860 / 裁判年月日: 昭和24年7月16日 / 結論: 棄却
醪を生産しようとしてその原料を仕込んだ上、必要な攪拌行爲等をした以上醪製造行爲に該當するものと云わなくてはならない。