被告人が免許を受けないで清酒製造の目的でその原料たる「モロミ」を造つた場合には清酒の製造未遂に当る
清酒製造の目的でその原料たる「モロミ」を造つた場合の罪質
旧酒税法(昭和15年法律35号)60条
判旨
酒税法違反(無免許製造)の罪について、清酒の製造を開始したが完成に至らない段階であっても、その行為が製造の未遂と認められる場合には処罰の対象となり、その判断は正当である。
問題の所在(論点)
酒税法における無免許製造罪について、清酒が完成する前の製造行為を「製造未遂」として処罰することができるか、その実行の着手の有無が問題となった。
規範
特定の禁圧された結果(本件では無免許での酒類製造)を実現するための密接な行為が開始され、その実行に着手したと認められる場合には、未遂罪としての処罰対象となる。製造の工程に照らし、目的とする酒類の完成に向けた客観的な危険性が認められる行為があれば、実行の着手があったと解される。
重要事実
被告人が、酒税法に基づき必要とされる製造免許を受けないまま、清酒の製造を目的としてその工程に着手した。しかし、清酒が完成する前の段階で発覚あるいは中断し、既遂には至らなかった。原審はこれを清酒の製造未遂罪にあたると判断したため、被告人側が法令違反等を理由に上告した。
あてはめ
清酒の製造工程において、原材料を投入し発酵させるなど、清酒を生成するための具体的な作業を開始した事実は、製造の既遂に至る客観的な危険性を有する行為である。本件において原判決が「清酒の製造未遂」と判断したことは、酒税法の趣旨および実行の着手に関する法理に照らして正当であるといえる。
結論
清酒の製造未遂と判断した原判示は正当であり、本件上告は棄却される。
実務上の射程
行政取締法規(酒税法等)における製造罪の実行の着手時期について、判例は未遂罪の成立を肯定する立場を明確にしている。答案上は、構成要件的結果(酒類の完成)に向けた密接な行為の開始をもって実行の着手を認める際の論拠として活用できる。
事件番号: 昭和24(れ)3162 / 裁判年月日: 昭和25年5月23日 / 結論: 棄却
いやしくも醪を製造しようとして、これに要する諸般の手段を完遂した以上、未だその醗酵作用が完成して居なかつたとしても、酒税法舊第六四條第一項第一號にいわゆる「醪ヲ製造シタル者」に該當する。