政府の免許を受けないで酒類を製造した以上、たとい自己等の飲用に供するために製造したものであつても、旧酒税法(昭和二八年法律第六号による改正前のもの)第一六条但書を拡張して適用さるべきものではない
自己等の飲用に供するために酒類を製造した場合と旧酒税法第一六条但書の適用の有無
旧酒税法(昭和15年法律35号)3条,旧酒税法(昭和15年法律35号)16条,旧酒税法(昭和15年法律35号)62条1項
判旨
自己消費目的で、販売や利得の目的がない場合であっても、政府の免許を受けずに酒類を製造すれば無免許酒類製造罪が成立する。また、変味酒や腐敗酒に対する加工であっても、それが製造の一過程として行われたものであれば同罪の構成要件に該当する。
問題の所在(論点)
自己消費目的(販売・利得目的の欠如)での酒類製造が、無免許酒類製造罪(酒税法違反)を構成するか。また、変味酒・腐敗酒への加工が「製造」に含まれるか。
規範
酒税法(昭和28年法律第6号改正前)の規定に基づき、政府の免許を受けないで酒類を製造した以上、その目的が自己等の飲用に供するためであり、販売・利得の目的が欠けていたとしても、無免許酒類製造罪を構成する。また、既存の酒類に対する加工であっても、それが製造の一過程として行われる限り、同罪の成立を妨げない。
重要事実
被告人は、政府の免許を受けることなく、酒類を製造したとして酒税法違反で起訴された。被告人は、当該製造は自己や家族が飲用するためのものであり、販売して利益を得る目的がなかったこと、および既存の変味酒や腐敗酒に対して加工を施したに過ぎないことを理由に、無免許酒類製造罪は成立しないと主張して上告した。
あてはめ
酒税法における製造の禁止は、酒税の徴収確保という行政目的を達するためのものである。したがって、主観的に販売や利得の目的がなく、自己消費のために製造した場合であっても、免許を受けない限り形式的に禁止される行為に該当すると解される。また、本件における変味酒や腐敗酒への加工の事実は認められるものの、記録によれば当該加工は酒類を完成させるための一連の「製造の一過程」として行われたものと認定できる。よって、これらの事情は罪の成立を阻却する理由とはならない。
結論
販売・利得の目的がなくても無免許酒類製造罪は成立し、製造の一過程としての加工も同罪に当たる。上告棄却。
実務上の射程
行政法規としての酒税法の性質上、目的のいかんを問わず、免許のない製造行為そのものを処罰対象とする判例である。答案上は、構成要件の認定において「販売目的」等の主観的要素を不要とする根拠として引用できる。
事件番号: 昭和30(あ)3140 / 裁判年月日: 昭和33年5月19日 / 結論: 棄却
被告人が免許を受けないで清酒製造の目的でその原料たる「モロミ」を造つた場合には清酒の製造未遂に当る