清酒の製造と残余のもろみの製造とは包括して酒税法五四条一項違反の一罪と解すべきである。
清酒の製造と残余のもろみ製造との罪数
酒税法54条1項,刑法45条
判旨
酒税法違反の罪において、清酒の製造と、その製造過程で生じた残余のもろみの製造行為は、包括して一罪(酒税法54条1項違反)を構成する。
問題の所在(論点)
清酒の製造と、その工程で生じた残余のもろみの製造行為について、酒税法54条1項違反の罪数関係をいかに解すべきか。
規範
一連の製造工程において生じる密造行為が、同一の製造目的に基づき、時間的・場所的に密接して行われる場合には、各工程の行為を個別に捉えるのではなく、包括して一個の罪を構成するものと解するのが相当である。
重要事実
被告人が、酒税法上の免許を受けずに清酒を製造し、さらにその製造過程において生じた残余のもろみ(酒類)についても同様に製造を継続したとして、酒税法54条1項違反に問われた事案。弁護人は、清酒の製造と残余のもろみの製造が別個の罪となる可能性等(法令違反)を主張して上告した。
あてはめ
清酒の製造過程において「残余のもろみ」が生じることは製造工程上の必然的ないし付随的な現象である。本件においては、清酒の製造という主たる行為と、その結果として生じたもろみの製造行為は、一連の密造活動として一体性を有するものと認められる。したがって、これらを個別の犯罪として分割するのではなく、包括して一罪と評価することが法的性質に合致する。
結論
清酒の製造と残余のもろみの製造は包括して酒税法54条1項違反の一罪となる。したがって、原判決の説示は正当であり、上告は棄却される。
実務上の射程
本判決は、製造工程上不可避的に生じる中間生成物や付随物の製造について、包括一罪の成立を認めたものである。司法試験においては、同一の違法目的の下で連続して行われる行為や、不可分な工程の一部をなす行為の罪数評価(包括一罪か併合罪か)を論じる際の参考となる。
事件番号: 昭和27(あ)511 / 裁判年月日: 昭和28年10月23日 / 結論: 破棄自判
被告人が旧酒税法(昭和二八年法律第六号による改正前のもの)施行当時、政府の免許を受けないで、焼酎製造の単一の意思をもつて、その過程として醪を造りその一部を同一日時場所において継続して二回に亘り蒸溜し焼酎の密造を遂げたが残部は蒸溜する前に発覚したという場合は、包括して一個の旧酒税法第六〇条第一項の罪と認めるべきである。