論旨援用のその余の高等裁判所判例については、原判決が如何なる趣旨でこれらの判例に反するかの具体的説明を欠いているから、判例違反の論旨として不適法である。
判例違反の主張を具体的に説明しない上告の適否
刑訴法405条3号,刑訴規則253条
判旨
酒税法における醪製造罪は、発酵の有無にかかわらず、醪(もろみ)を製造する行為に着手した時点で成立する。
問題の所在(論点)
酒税法(旧法含む)上の醪製造罪に関し、製造過程における「発酵」が開始される前に発覚した場合であっても、同罪が成立するか。
規範
醪製造罪の成否について、発酵という現象の発生は必須の要件ではなく、醪の製造に向けられた具体的な行為が行われれば、発酵前に発覚した場合であっても同罪が成立する。
重要事実
被告人が酒類を製造する目的で、醪の原料となる物品を混和するなどして製造に着手したが、発酵が始まる前の段階で捜査機関に発覚し、検挙された(具体的な混和物や製造状況の詳細は判決文からは不明)。
あてはめ
最高裁判所は、過去の判例(昭和25年(あ)第1237号等)を引用する形で、発酵前に発覚した場合でも醪製造罪の成立を肯定。本件においても、製造に向けた着手があった以上、発酵の有無を問わず既遂(または構成要件該当性)を認めるべきとした。
結論
発酵前に発覚した場合であっても、醪製造罪の成立を肯定した原判決に誤りはない。
実務上の射程
行政取締法規における「製造」の概念を広く捉え、結果としての化学変化(発酵)を待たず、行為の着手をもって処罰対象とする実務運用を支持するものである。答案上は、製造罪の実行の着手時期や既遂時期を論じる際の傍証として活用できる。
事件番号: 昭和24(れ)3162 / 裁判年月日: 昭和25年5月23日 / 結論: 棄却
いやしくも醪を製造しようとして、これに要する諸般の手段を完遂した以上、未だその醗酵作用が完成して居なかつたとしても、酒税法舊第六四條第一項第一號にいわゆる「醪ヲ製造シタル者」に該當する。