判旨
賄賂罪における公務員の職務権限は、法令上の明文に限定されず、慣行や実質的な事務処理の態様を含めて判断されるべきである。原審が認定した被告人の職務権限は妥当であり、刑訴法411条を適用すべき事由はない。
問題の所在(論点)
賄賂罪の成立要件である公務員の「職務」に関し、法令上の明記がない場合であっても職務権限が認められるか、およびその認定基準が問題となる。
規範
賄賂罪(刑法197条等)における「職務」とは、公務員がその地位に基づいて法令上担当すべきものとされている事務だけでなく、これと密接な関連を有する事務や、慣行上または事実上取り扱っている事務も含まれる。職務権限の有無は、当該公務員の一般的職務権限の範囲内にあるか否かによって判断される。
重要事実
被告人は公務員の地位にあり、特定の事務に関与していたが、弁護人側はその事務が被告人の法令上の職務権限に属しないと主張して上告した。判決文からは具体的な官職名や具体的な授受の態様などの事案の詳細は不明であるが、原審は被告人に職務権限があると認定していた。
あてはめ
本判決は、原審が認定した職務権限の範囲について、弁護人の主張は独自の憲法解釈に基づくものであり、刑訴法405条の上告理由に該当しないと判示した。記録を精査しても、原審の職務権限の認定に不当な点はなく、職務密接関連性や実質的な権限行使の事実に照らして、被告人の行為は職務に関連するものと認められる。
結論
被告人の職務権限を認めた原判決に誤りはなく、上告を棄却する。
実務上の射程
賄賂罪における職務権限を広範に捉える実務上の基準を確認するものである。答案上は、法令上の権限(具体的職務権限)だけでなく、一般的職務権限や、職務と密接に関連する行為についても賄賂罪の「職務」に該当することを論証する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和36(あ)1016 / 裁判年月日: 昭和36年9月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賄賂罪における公務員の職務権限は、法的な決定権限に限られず、行政指導や勧告を行うといった事実行為的な職務も含まれる。また、所属部署内での担当班が異なっても、部署全体の所管事務の範囲内であれば職務権限が認められる。 第1 事案の概要:東京都経済局農林経済部農地管理課の吏員であった被告人が、農地法5条…