判旨
収賄罪の成立要件である「職務」とは、公務員の一般的職務権限に属する事務を指し、地方自治法上の競争入札の要否が議会の同意に係るとされる場合、その手続に関与することは公務員の職務に該当する。また、犯情の差異に基づき共同被告人間で量刑に差を設けることは憲法14条に違反しない。
問題の所在(論点)
本件工事の請負が「臨時急施を要する」ものに当たらない場合に、その請負契約に関する事務が公務員の「職務」に含まれ、賄賂受領が収賄罪を構成するか。また、共同被告人間での量刑の差異が法の下の平等に反しないか。
規範
収賄罪(刑法197条1項)にいう「その職務に関し」とは、公務員の一般的職務権限に属する事務であることを要する。地方自治法上の例外規定(臨時急施を要する場合等)に該当せず、議会の同意等の正当な手続を要する事務について、その判断や手続に関与する行為は、当該公務員の職務権限に含まれる。
重要事実
被告人Aは公務員として、工事の請負契約に関与していた。当該工事の請負を競争入札に付するか否かについて、地方自治法243条(当時)の「臨時急施を要する」ものとは認められない状況であった。そのため、本来は議会の同意が必要な事案であったが、被告人は賄賂を受領し、当該工事の請負に関して便宜を図ったとして収賄罪に問われた。
あてはめ
本件工事は、地方自治法243条の「臨時急施」には該当しない。この場合、競争入札の実施可否は議会の同意に係ることとなり、公務員がその手続や執行に関与することは正当な一般的職務権限の範囲内である。したがって、被告人が本件工事に関して金員を受領したことは、その職務に関連したものと評価できる。また、量刑については、共同被告人であっても犯情(犯行の態様、役割、情状等)に差異がある以上、異なる刑を科すことは合理的区別であり憲法14条に違反しない。
結論
被告人の賄賂収受は職務に関するものといえ、収賄罪が成立する。また、共同被告人との量刑の差異に憲法違反はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
収賄罪の職務権限の有無が争点となる際、地方自治法等の行政法規に基づく手続的要件(議会の同意の要否等)が職務の範囲を画定する一要素となることを示している。答案上は、公務員の具体的権限を実定法に照らして特定する際の判断材料として活用できる。
事件番号: 昭和26(れ)774 / 裁判年月日: 昭和26年11月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賄賂罪における公務員の職務権限は、法令上の明文に限定されず、慣行や実質的な事務処理の態様を含めて判断されるべきである。原審が認定した被告人の職務権限は妥当であり、刑訴法411条を適用すべき事由はない。 第1 事案の概要:被告人は公務員の地位にあり、特定の事務に関与していたが、弁護人側はその事務が被…