判旨
上告の理由として、原判決が依拠した証言の証拠価値を否定し、事実誤認のみを主張することは、適法な上告理由に当たらない。
問題の所在(論点)
証拠の証明力の評価に対する不服や、それに伴う事実誤認の主張が、刑訴法(当時の刑訴応急措置法等)上の適法な上告理由として認められるか。
規範
上告審において適法な上告理由となるためには、憲法違反や判例違反、あるいは法令の解釈誤り等の限定された事由が必要であり、単なる事実誤認の主張や証拠評価の不当を訴えることは原則として許されない(刑訴法等関連規定の趣旨)。
重要事実
被告人が、原判決において示された証人の証言には証拠価値がないと主張し、それに基づいた事実認定には誤りがあるとして上告を申し立てた事案である。具体的な犯罪事案の内容については判決文からは不明である。
あてはめ
本件の上告趣意は、原判決が挙げた証人の証言が信用できないとするものであり、これは実質的に原判決が認定した事実の誤認を主張するものにすぎない。このような証拠価値の否認や事実誤認の主張は、法律上の上告理由を定めた規定(刑訴応急措置法13条2項等)に該当しない。
結論
本件上告は適法な上告理由を欠くため、棄却されるべきである。
実務上の射程
刑事訴訟において、上告審は法律審であり、一審・二審のような事実認定の当否を直接争う場ではないことを示す。実務上、事実誤認を理由に上告する場合は、それが著しく正義に反するなどの特段の事情を法律構成に載せる必要があるが、本判決はそのような例外を認めない原則的な態度を確認するものである。
事件番号: 昭和26(あ)1706 / 裁判年月日: 昭和26年9月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本件判決は、事実誤認と量刑不当の主張は刑事訴訟法405条の上告理由に該当しないとして上告を棄却した。 第1 事案の概要:被告人が上告を申し立てたところ、弁護人が主張した上告趣意の内容が、事案における事実認定の誤り(事実誤認)および宣告された刑の重さに対する不服(量刑不当)であったという事案である。…