判旨
裁判の遅延が憲法37条1項に違反する場合であっても直ちに原判決の破棄理由とはならず、また、実刑による家族の生活困窮や困窮ゆえの犯罪が憲法25条に基づき正当化されることはない。
問題の所在(論点)
刑事裁判における迅速な裁判の欠如(憲法37条1項)および被告人・家族の生活困窮(憲法25条)が、原判決の破棄事由または犯罪の正当化事由となるか。
規範
1. 憲法37条1項の迅速な裁判の保障に違反する事態が生じたとしても、それが当然に判決に影響を及ぼすべきものとはいえず、原判決の破棄理由とはならない。 2. 憲法25条の生存権保障は、被告人に実刑を科すことで家族が生活困難に陥る場合や、生活困窮を理由に犯した罪を正当化し、刑罰を免除させる根拠とはならない。
重要事実
被告人が刑事事件について有罪判決を受けた際、上告趣意において、①裁判が迅速を欠き憲法37条1項に違反すること、②実刑判決により家族が生活困難に陥ることが憲法25条に違反すること、③最低限度の生活が営めないために犯した罪は憲法25条1項により正当化されるべきことを主張した事案である。
あてはめ
1. 迅速な裁判について:裁判が迅速を欠いたとしても、その事実が直ちに判決の内容自体に影響を及ぼすものではないため、上訴理由としての不当性は認められない。 2. 生存権について:刑罰の執行に伴う家族の生活苦は、刑事責任の追及を妨げるものではなく、また、困窮状態にあるからといって違法な犯罪行為が憲法上正当化される余地はない。
結論
憲法37条1項および25条違反を理由とする上告は理由がなく、棄却されるべきである。
実務上の射程
裁判の遅滞が著しい場合に免訴を認めた「高田事件」判決(最大判昭47・12・20)以前の判断であり、現在は極端な遅延については免訴の可能性がある点に注意が必要。一方、生活困窮を理由とする違法性阻却や責任免除が認められないとする生存権の解釈は、現在の実務でも維持されている。
事件番号: 昭和26(あ)668 / 裁判年月日: 昭和27年3月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法25条1項は、生存権を保障するものであるが、たとえ最低限度の生活を営み得ない状況で犯罪に至ったとしても、その行為が同条項により正当化され、あるいは実刑を免れる根拠とはならない。 第1 事案の概要:被告人は、自身の生活状況が極めて困窮し、最低限度の生活すら営み得ない状態にある中で犯罪に及んだ。被…