原審の確定した事実によれば、被告人は兵庫県A部B課勤務のC係主任としての職務に関し、D繊維製品株式会社常務取締役兼事務部長であつたEから、昭和二一年八月初頃及び同年一二月二五日頃それぞれ現金五〇〇円宛の供与を受けたというのである。右判示日時当時における現金五〇〇円の供与が、一般社交的儀礼の範囲を逸脱すると認められるべきものであり、論旨は理由なきものである。
一般社交的儀礼の範囲を逸脱すると認められる金員の供与と収賄罪の成立
刑法197条
判旨
賄賂罪における「賄賂」とは、職務に関連する対価としての不法な利益を指すが、その供与が一般社交的儀礼の範囲内であればこれに該当しない。本件では、当時の社会状況に照らし、各500円の供与が社交的儀礼の範囲を逸脱していると判断された。
問題の所在(論点)
公務員に対する金銭の供与が、職務に関連するものであっても、社交的儀礼の範囲内として賄賂罪の成立が否定される基準はどこにあるか。
規範
公務員が受領した利益が賄賂罪(刑法197条等)の「賄賂」に該当するか否かは、当該利益が職務の対価としての性質を有し、かつその供与が「一般社交的儀礼の範囲を逸脱」するものであるか否かによって決せられる。
重要事実
被告人は兵庫県公務員としてC係主任の職務に従事していたところ、繊維製品株式会社の常務取締役から、昭和21年8月初旬及び同年12月25日頃、それぞれ現金500円ずつの供与を受けた。当時の物価水準等の背景事情(判決文からは詳細不明)において、この金銭供与が職務に関連してなされたものであるかが争われた。
あてはめ
本件における現金500円(合計1000円)の供与は、当時の社会情勢や公務員の職務の純潔性に対する信頼に照らせば、単なる挨拶や厚意の範囲を超えたものといえる。したがって、これらは「一般社交的儀礼の範囲を逸脱」しており、職務に関連する不法な対価(賄賂)にあたると評価される。
結論
被告人に対する賄賂罪の成立を認めた原判決は正当であり、本件上告は棄却される。
実務上の射程
賄賂罪の成否について、職務関連性がある場合でも「社交的儀礼」の抗弁が立ちうることを認めた判例である。答案上は、供与された利益の多寡、時期、職務内容、関係性等の具体的事実を拾い、「一般社交的儀礼の範囲を逸脱しているか」という規範にあてはめて論じる際の根拠として用いる。
事件番号: 昭和27(あ)5176 / 裁判年月日: 昭和29年9月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公務員が受け取った金員が社会的儀礼の範囲内のものであるとしても、それが公務員の職務に関して供与されたものである限り、収賄罪における「賄賂」に該当する。 第1 事案の概要:被告人A及びBは公務員であり、職務に関連して複数の金員を受領した。被告人側は、授受された各金員は単なる「社会的儀礼」として贈られ…