判旨
賄賂罪における賄賂とは、公務員の職務に関する対価としての不正な利益を指すが、単なる社交的儀礼の範囲に属する贈遺であれば職務との対価性が否定され、賄賂には当たらない。
問題の所在(論点)
公務員に対して提供された利益が、刑法上の「賄賂」に該当するか、あるいは「単なる社交的儀礼」として不可罰となるかの区別が問題となる。
規範
賄賂罪における「賄賂」とは、公務員の職務に関する対価としての利益をいう。もっとも、贈与された利益が社会通念上、単なる社交的儀礼の範囲にとどまるものと認められる場合には、職務に対する対価性が欠けるため、賄賂に該当しない。
重要事実
被告人が公務員に対し、金品等の利益を供与した。これに対し弁護人は、当該供与は単なる社交的儀礼の範囲に属する贈遺であり、賄賂には当たらない旨を主張して上告した。
あてはめ
記録を精査しても、本件における贈与行為が、儀礼的な挨拶や儀礼的な贈答といった、社会通念上許容される「単なる社交的儀礼の範囲」に属するものとは認められない。したがって、当該利益は公務員の職務に関連する対価としての性質を有しており、賄賂性を否定することはできない。
結論
本件の贈与は単なる社交的儀礼の範囲に属するものとは認められず、賄賂罪が成立する。
実務上の射程
賄賂罪の成否において、職務関連性と対価性の有無を判断する際の消極的要素として「社交的儀礼」という枠組みを提示している。実務上は、供与された利益の価額、贈与者と公務員の親疎関係、時期、名目などを総合考慮して、儀礼の範囲を逸脱しているかを判断する際のリファレンスとなる。
事件番号: 昭和26(れ)561 / 裁判年月日: 昭和26年9月6日 / 結論: 棄却
原審の確定した事実によれば、被告人は兵庫県A部B課勤務のC係主任としての職務に関し、D繊維製品株式会社常務取締役兼事務部長であつたEから、昭和二一年八月初頃及び同年一二月二五日頃それぞれ現金五〇〇円宛の供与を受けたというのである。右判示日時当時における現金五〇〇円の供与が、一般社交的儀礼の範囲を逸脱すると認められるべき…