判旨
情状に関する証人尋問の請求を採用するか否かは、事実審裁判所の合理的な裁量に属する。また、刑の執行猶予を付するか否かも裁判所の裁量事項であり、これらを付さなかったことを不当とする主張は、適法な上告理由には当たらない。
問題の所在(論点)
1. 情状に関する証人尋問の請求を却下することが、弁護権を不当に制限し憲法に違反するか。2. 執行猶予を付し得る事案で実刑を選択することが、適法な上告理由となり得るか。
規範
1. 刑事訴訟において、被告人が請求した証人尋問等の証拠調べを採用するか否かは、原則として裁判所の裁量に属する。2. 法律上執行猶予を付し得る事案であっても、実際に執行猶予を付すか否かは裁判所の裁量に属する。3. 量刑の不当(執行猶予の不付与を含む)や証拠採用の是非は、それ自体が憲法違反や弁護権の不当な制限とならない限り、上告理由として制限される。
重要事実
被告人が刑法上の犯罪に問われた事案において、原審(控訴審)は被告人側が申請した「情状に関する証人」の尋問を却下し、かつ執行猶予を付さずに実刑判決を言い渡した。これに対し、被告人側は、証人尋問の却下は弁護権の制限であり、また執行猶予を付さなかったことは不当かつ違憲であるとして上告した。
あてはめ
1. 証人尋問の要否の判断については、裁判所に広範な裁量が認められている。本件において情状に関する証人申請を採用しなかったとしても、それは裁判所の裁量権の範囲内で行われた手続であり、直ちに弁護権を不当に制限したものとは評価できない。2. 執行猶予の付与については、事実審が諸般の事情を考慮して決定すべき事由である。これを付さなかったことへの非難は、本質的に量刑の当否を争う「量刑不当」の主張に帰結する。刑事訴訟法上の制限に鑑みれば、このような裁量の範囲内の不満は適法な上告理由を構成しない。
結論
情状証人の採用不採用および執行猶予の成否は裁判所の裁量に属し、本件における原審の判断に弁護権制限等の違法は認められないため、上告を棄却する。
実務上の射程
刑事訴訟法第298条に基づく証拠調べの採否および刑法第25条に基づく執行猶予の判断が、裁判所の裁量事項であることを確認する際に用いる。特に、証拠却下が弁護権の侵害にあたると主張された場合の反論の論理構成(裁量論)として活用できる。
事件番号: 昭和25(あ)1670 / 裁判年月日: 昭和26年10月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑の執行猶予を付すか否かは、裁判所の広範な自由裁量に属する事項である。したがって、被告人に執行猶予を付さなかった原判決の判断に審理不尽の違法があるとは認められない。 第1 事案の概要:被告人の弁護人は、原判決が被告人に対し執行猶予を付さなかったことについて、尽くすべき審理を尽くしておらず、最高裁の…