判旨
不正な手段で配給品を受領した場合、特別法である食糧緊急措置令ではなく刑法上の詐欺罪が成立し、公定代金を支払ったとしても財産的損害が認められ同罪が成立する。
問題の所在(論点)
1. 不正受配に対し、食糧緊急措置令ではなく刑法246条1項の詐欺罪を適用できるか。2. 配給品の公定代金を支払っている場合でも、詐欺罪における「損害」が認められ、同罪が成立するか。
規範
不正な手段を用いて配給品を受領する行為には、刑法上の詐欺罪が適用される。また、当該配給品の対価として公定代金を支払った場合であっても、欺罔行為によって本来受領し得ない財物の交付を受けた以上、詐欺罪の成立を妨げない。
重要事実
被告人は、世帯主B及びC名義の配給通帳を不正に使用し、醤油合計4斗5合(第一審および原審では4斗5升と誤記)を騙取した。被告人側は、食糧緊急措置令を適用すべきであること、および公定代金を支払っていることから詐欺罪は成立しないことを主張して上告した。
あてはめ
本件における配給品の不正受領という手段による受配行為は、既存の判例(昭和23年7月15日判決等)に照らし、詐欺罪の規定を適用して処断すべき事案である。また、公定代金を支払っている事実は、欺罔によって財物の占有を移転させたという事実を否定するものではなく、実質的な財産的価値の移転が認められる以上、同罪の成立を左右しない(昭和23年6月9日大法廷判決参照)。
結論
被告人の行為には刑法詐欺罪が成立する。公定代金の支払いは詐欺罪の成立を阻害しないため、上告を棄却する。
実務上の射程
詐欺罪における「財産上の損害」の要件に関し、対価の支払があっても、交付の目的が達せられない場合や本来受領資格のない者が受領した場合には損害が認められるとする「形式的個別財産説」の立場を補強する判例として活用できる。
事件番号: 昭和25(れ)1652 / 裁判年月日: 昭和26年3月16日 / 結論: 棄却
主要食糧に関し、原判決認定のような不正受配の行為は刑法詐欺罪を構成し、所論食糧緊急措置令第一〇条違反をもつて問擬すべきものでないことは、既に、当裁判所の判例とするところである(昭和二三年(れ)第三二九号同年七月一五日第一小法廷判決、判例集二巻八号九〇三頁以下)。又それが公定価格を支払つて受配しても詐欺罪の成立を妨げるも…