共同正犯としての公訴事実に対し従犯であると主張することは、単なる事実の否認の一種であつて、旧刑訴法第三六〇条第二項に定める主張に当らないことは、当裁判所の判例として示すところである(昭和二四年(れ)第一四三五号、同二六年三月一五日第一小法廷判決、昭和二四年(れ)第二四四五号、同二五年二月二八日第三小法廷判決)
従犯であるとの主張と旧刑訴法第三六〇条第二項
刑訴法60条,刑訴法62条,旧刑訴法360条2項
判旨
共謀の事実が存在する以上、特定の共犯者が犯罪の実行行為を分担しなかったとしても、共同正犯としての刑事責任を免れることはできない。いわゆる共謀共同正犯の成立を認めるべきである。
問題の所在(論点)
犯罪の実行行為を自ら分担していない共謀者が、刑法60条の共同正犯として処罰されるか(共謀共同正犯の成否)。
規範
刑法60条にいう「共同して犯罪を実行した」とは、必ずしも全員が構成要件に該当する実行行為を分担することを要しない。複数の者が特定の犯罪を行うことを共謀し、その共謀に基づき共犯者の一部が実行行為に及んだ場合、実行行為を分担していない共謀者も、正犯としての責任を負う(共謀共同正犯)。
重要事実
被告人は他2名と共謀の上、2回にわたり賭場を開張し、利益を図ったとして賭博場開張図利罪の共同正犯で起訴された。弁護人は、被告人が犯罪の実行行為自体には関与していないことから、共同正犯ではなく従犯にすぎないと主張した。
あてはめ
原判決の認定によれば、被告人は他2名と共謀して賭場を開張したという事実が認められる。被告人が自ら実行行為に与っていなかったとしても、共謀の事実がある以上、その共謀に基づいて他の共犯者が実行行為を行ったのであれば、被告人は共同正犯としての責任を負うべきである。したがって、実行行為の分担がないことを理由に正犯性を否定することはできない。
結論
被告人に実行行為の分担がなくても、共謀の事実がある以上、共同正犯が成立する。したがって、被告人を共同正犯と認定した原判決に違法はない。
実務上の射程
共謀共同正犯の成立を認めた初期の重要判例である。司法試験においては、実行行為を分担していない者の処罰根拠(一部実行全部責任の原則)を論じる際の理論的支柱となる。答案では、①共謀(意思の連絡)、②共謀に基づく実行行為、③正犯意思(自己の犯罪として行う意思)の3要件を検討する際の前提として引用する。
事件番号: 昭和24(れ)749 / 裁判年月日: 昭和24年6月18日 / 結論: 破棄差戻
賭博開帳の罪は、利益を得る目的でもつて、賭博を爲さしめる場所を開設する罪であり、その利益を得る目的とは、その賭場において、賭博をする者から寺錢、または手數料等の名儀をもつて、賭場開設の對價として、不法な財産的利得をしようとする意思のあることをいうのである。
事件番号: 昭和24(れ)1564 / 裁判年月日: 昭和24年10月8日 / 結論: 棄却
賭博開帳罪は犯人が利益を得る目的をもつて賭場を開設し賭者に賭博をする機會を與へることによつて成立するのであるから現實に利益を収得した事実を要するものではない。それ故犯人が寺錢として収得した金員から賭場開設の費用を控除して現實に何等の利益を収得しなつた場合でも苟も利益を得る目的をもつて賭場を開帳した以上賭博開帳罪は成立す…
事件番号: 昭和46(あ)2714 / 裁判年月日: 昭和48年2月28日 / 結論: 棄却
一 賭博場開張図利罪が成立するためには、必ずしも賭博者を一定の場所に集合させることを要しない。 二 一般多数人をしてプロ野球の勝敗に関する賭銭博奕(いわゆる「野球賭博」)を行なわせて利を図るため、ある場所に電話、帳面、プロ野球日程表等を備えつけ、同所において、電話により賭客の申込みを受け、あるいは同所外で受けた賭客の申…