一 賭博場開張図利罪が成立するためには、必ずしも賭博者を一定の場所に集合させることを要しない。 二 一般多数人をしてプロ野球の勝敗に関する賭銭博奕(いわゆる「野球賭博」)を行なわせて利を図るため、ある場所に電話、帳面、プロ野球日程表等を備えつけ、同所において、電話により賭客の申込みを受け、あるいは同所外で受けた賭客の申込みを集計して整理し、また、当該プロ野球試合の結果に基づいて勝者に支払うべき賭金およびその中から徴収すべき寺銭の集計などをし、さらに寺銭を徴収する等の方法により行なつた本件「野球賭博」開催の所為(判文参照)は、賭博場開張図利罪を構成する。
一、賭博場開張図利罪と賭博者の集合の要否 二、いわゆる野球賭博の開催が賭博場開張図利罪を構成するとされた事例
刑法186条2項
判旨
賭博場開張図利罪(刑法186条2項)の成立には、必ずしも賭博者を一定の場所に集合させる必要はなく、事務所を本拠として電話等により賭けの申込みを受ける形態も「開張」に含まれる。また、主催者が賭金の不足分を補填し危険を負担していても、それが賭博を成立させ寺銭を徴収するための手段である場合は、単なる賭客同士の賭博ではなく同罪が成立する。
問題の所在(論点)
1. 電話や連絡を通じた賭博の受付けにおいて、賭博者を物理的に集合させない場合でも「賭博場を開張」したといえるか。2. 主宰者が自ら賭金の不足分を補填し危険を負担している場合、単なる賭客の一人として賭博罪に留まるのか、それとも賭博場開張図利罪が成立するか。
規範
1. 「賭博場」の「開張」とは、自ら主宰者となって賭博をさせる場所を設けることをいい、必ずしも賭博者を一定の場所に物理的に集合させることを要しない。2. 主宰者が賭金の不一致を補填して危険を負担していても、その主眼が賭博を成立させて寺銭(利益)を徴収することにある場合は、依然として賭博場開張図利罪の主体たり得る。
重要事実
事件番号: 昭和24(れ)749 / 裁判年月日: 昭和24年6月18日 / 結論: 破棄差戻
賭博開帳の罪は、利益を得る目的でもつて、賭博を爲さしめる場所を開設する罪であり、その利益を得る目的とは、その賭場において、賭博をする者から寺錢、または手數料等の名儀をもつて、賭場開設の對價として、不法な財産的利得をしようとする意思のあることをいうのである。
被告人Dは、野球賭博を主宰し利益を得るため、事務所に電話、売上台帳、日程表等を備え付けた。配下の被告人A、B、Cに命じて、事務所内外で電話等により多数の客から賭けの申込みを受けさせ、勝敗に応じた配当や寺銭(勝金の1割)の集計を行わせた。Dは、双方のチームに対する賭金が同額にならない場合、ハンデを調整して客を誘引し、それでも不一致が生じる際は自ら不足分を補填して危険を負担していた。A、B、Cは誘引、受付、整理、支払等の業務を分担した。
あてはめ
1. Dは事務所を本拠とし、電話等の設備を用いて客と連絡を取り合い賭博を管理していた。場所的拠点が形成されている以上、客が集合せずとも「開張」に当たる。2. Dによる危険負担は、賭博を円滑に成立させ、安定的に寺銭を徴収するための手段にすぎない。その活動の主眼は、自ら賭博を主催し、場を提供して利益を図る点にある。したがって、Dは単なる賭客ではなく「主宰者」と評価される。3. 従属的な役割を果たしたA、B、Cについては、正犯Dの実行行為を容易にしたものと解される。
結論
被告人Dに賭博場開張図利罪が成立し、被告人A、B、Cには同罪の幇助罪が成立する。
実務上の射程
物理的な集合を伴わない非対面型の賭博(電話、インターネット等)における「開張」の認定に広く妥当する。また、ブックメーカーのように主宰者がリスクを負う形式であっても、寺銭徴収という利得目的が主眼であれば同罪が適用されることを示す重要な指針となる。
事件番号: 昭和24(れ)1564 / 裁判年月日: 昭和24年10月8日 / 結論: 棄却
賭博開帳罪は犯人が利益を得る目的をもつて賭場を開設し賭者に賭博をする機會を與へることによつて成立するのであるから現實に利益を収得した事実を要するものではない。それ故犯人が寺錢として収得した金員から賭場開設の費用を控除して現實に何等の利益を収得しなつた場合でも苟も利益を得る目的をもつて賭場を開帳した以上賭博開帳罪は成立す…
事件番号: 昭和24(れ)2484 / 裁判年月日: 昭和25年5月19日 / 結論: 棄却
一体軍鷄賭博で賭場開帳者が傷代蓆代、等の名義で鷄博の勝者から一定率の金錢を徴收した場合には、むしろかえつて、特段の事情がない限りその徴收金は一應賭場開帳者の利に歸するものであるとみるのが社會通念であつて、特別の判示を要しないこと一般の賭博における寺錢等と異らない。そして又その金錢が夫々軍鷄所有者、蓆所有者等に軍鷄の傷代…