一体軍鷄賭博で賭場開帳者が傷代蓆代、等の名義で鷄博の勝者から一定率の金錢を徴收した場合には、むしろかえつて、特段の事情がない限りその徴收金は一應賭場開帳者の利に歸するものであるとみるのが社會通念であつて、特別の判示を要しないこと一般の賭博における寺錢等と異らない。そして又その金錢が夫々軍鷄所有者、蓆所有者等に軍鷄の傷代なり蓆の損料なりとして支拂われるとしても、金額は勝負の都度勝利者の取得する金錢から一定歩合で取立てられるのであるから、その時の賭金の多寡により必ずしも一定せず、場合によつては全額支出現實の利益がないこともあろうが、それを以つて賭場開帳者に當初から圖利の意思がなかつたものということはできない。
軍鷄賭博において傷代蓆代等の名義で徴收せられた金錢の歸屬
刑法185條,刑法186條2項
判旨
賭博場開張図利罪における「図利の意思」は、軍鶏賭博で「傷代」や「蓆代」名義の徴収がなされた場合、特段の事情がない限り認められ、徴収金が後に他者の費用に充てられても左右されない。
問題の所在(論点)
軍鶏賭博において「傷代」や「蓆代」の名目で金銭を徴収する行為が、刑法186条2項にいう「図利(利益を得る)」の目的に該当するか。また、徴収金が他者への支払いに充てられる場合でも図利の意思は認められるか。
規範
刑法186条2項の賭博場開張図利罪における「図利」の目的とは、賭博場を開設して財産上の利益を得る意図を指す。名目がいかなるものであっても、賭場開張者が賭博の勝者から一定率の金銭を徴収する場合には、特段の事情がない限り、その徴収金は開張者の利に帰すべきものと解され、当初から図利の意思があったと認められる。徴収金が後に実費(軍鶏の治療費や用具の損料等)に充てられ、結果として現実の利益が残らない可能性があっても、図利の意思の成立は妨げられない。
重要事実
被告人らは、軍鶏賭博(軍鶏を戦わせ、その勝敗に金銭を賭ける行為)の場を開設した。その際、賭場の開張者は「傷代」(負傷した軍鶏の治療費名目)や「蓆代」(敷物の使用料名目)といった名目で、賭博の勝者から取得金の一定歩合を徴収していた。弁護人は、これらの徴収金は軍鶏や蓆の所有者に支払われるべき性質のものであり、開張者自身の利益になるものではないから、図利の目的は認められないと主張して上告した。
あてはめ
軍鶏賭博における「傷代」等の名目での徴収は、社会通念上、一般の賭博における寺銭や手数料と同様に、一旦は開張者の利に帰するものとみるのが相当である。徴収額が勝利金の一定歩合で決まる以上、賭金の多寡に左右される不安定なものであり、仮に徴収した全額を軍鶏所有者等への支払いに充てて現実に利益が残らなかったとしても、それは収支の結果に過ぎない。したがって、徴収を行う時点で、賭博場開設の対価として経済的利益を得ようとする「図利の意思」は認められるといえる。
結論
被告人らには「図利の目的」が認められ、賭博場開張図利罪が成立する。上告棄却。
実務上の射程
本判決は、図利の目的の抽象性を認めるものである。名目が実費弁償的であっても、賭博場開設を契機に金銭を徴収する仕組みがあれば、特段の事情がない限り「図利の意思」が推認される。実務上は、場所代や手数料の名目に関わらず、開張者が金員を徴収する事実があれば、本罪の成立を肯定する有力な根拠となる。
事件番号: 昭和24(れ)1564 / 裁判年月日: 昭和24年10月8日 / 結論: 棄却
賭博開帳罪は犯人が利益を得る目的をもつて賭場を開設し賭者に賭博をする機會を與へることによつて成立するのであるから現實に利益を収得した事実を要するものではない。それ故犯人が寺錢として収得した金員から賭場開設の費用を控除して現實に何等の利益を収得しなつた場合でも苟も利益を得る目的をもつて賭場を開帳した以上賭博開帳罪は成立す…
事件番号: 昭和24(れ)749 / 裁判年月日: 昭和24年6月18日 / 結論: 破棄差戻
賭博開帳の罪は、利益を得る目的でもつて、賭博を爲さしめる場所を開設する罪であり、その利益を得る目的とは、その賭場において、賭博をする者から寺錢、または手數料等の名儀をもつて、賭場開設の對價として、不法な財産的利得をしようとする意思のあることをいうのである。
事件番号: 昭和46(あ)2714 / 裁判年月日: 昭和48年2月28日 / 結論: 棄却
一 賭博場開張図利罪が成立するためには、必ずしも賭博者を一定の場所に集合させることを要しない。 二 一般多数人をしてプロ野球の勝敗に関する賭銭博奕(いわゆる「野球賭博」)を行なわせて利を図るため、ある場所に電話、帳面、プロ野球日程表等を備えつけ、同所において、電話により賭客の申込みを受け、あるいは同所外で受けた賭客の申…