判旨
賭博場開張図利罪(刑法186条2項)の成立には、利益を得る目的が存在すれば足り、現実に利益を得たか否かは問わない。また、現実に寺銭を徴収した事実が認められれば、営利の目的があったことは自明であり、別途詳細な判示を要さず同罪が成立する。
問題の所在(論点)
賭博場開張図利罪の成立において、現実に利益を得たことが必要か。また、寺銭を徴収した事実がある場合に、判決文において別途「利を図る目的」を明示的に判示する必要があるか。
規範
刑法186条2項にいう「利を図る」目的(営利の目的)とは、賭場開張の対価として不法な財産的利益を得る意図を指す。本罪は目的犯であり、当該目的が存在する以上、現実に利益を取得したことまでは要件とされない。
重要事実
被告人は、賭場を開張して参加者から寺銭(手数料)を徴収した。一審判決は、証拠に基づき被告人が賭場を開張して寺銭を徴収した事実を認定したが、弁護側は、現実に利益を得たか否かの判断や営利目的の有無に関する判示が不十分であり、判例違反があるとして上告した。
あてはめ
本件では、被告人が実際に賭場を開いて寺銭を徴収した事実が証拠により認められている。このように現実に寺銭を徴収した事実が認められる場合には、客観的な行為態様から「利を図った」ことは自ら明らかである。したがって、判決文において寺銭徴収の事実を判示している以上、営利の目的についての判示を欠くところはなく、罪の成立を認めることができる。
結論
被告人が賭場を開張し寺銭を徴収した以上、現実に利益を得たか否かにかかわらず、営利の目的は明らかであり、賭博場開張図利罪が成立する。
実務上の射程
目的犯における主観的意図の認定手法を示した射程を持つ。客観的な収益行為(寺銭徴収)が認められる場合、主観的要件である営利の目的は当然に推認され、判決書の理由不備とはならないことを確認する実務上重要な判断である。
事件番号: 昭和23(れ)1672 / 裁判年月日: 昭和24年4月12日 / 結論: 棄却
一 しかし賭博の寺錢というものは、事前に一定の金額を豫定してその金額に達するまで集金するものではなく、勝負の都度、勝利者の取得する金錢中から一定の歩合で取立てるものであるからその金額は不定であつて、その場で行はれる賭博の回數、賭者の人數賭金の多少等によつて變動する。これ等が多ければ多いほど寺錢も多額となり、從つて共同遊…
事件番号: 昭和24(れ)1564 / 裁判年月日: 昭和24年10月8日 / 結論: 棄却
賭博開帳罪は犯人が利益を得る目的をもつて賭場を開設し賭者に賭博をする機會を與へることによつて成立するのであるから現實に利益を収得した事実を要するものではない。それ故犯人が寺錢として収得した金員から賭場開設の費用を控除して現實に何等の利益を収得しなつた場合でも苟も利益を得る目的をもつて賭場を開帳した以上賭博開帳罪は成立す…
事件番号: 昭和24(れ)2484 / 裁判年月日: 昭和25年5月19日 / 結論: 棄却
一体軍鷄賭博で賭場開帳者が傷代蓆代、等の名義で鷄博の勝者から一定率の金錢を徴收した場合には、むしろかえつて、特段の事情がない限りその徴收金は一應賭場開帳者の利に歸するものであるとみるのが社會通念であつて、特別の判示を要しないこと一般の賭博における寺錢等と異らない。そして又その金錢が夫々軍鷄所有者、蓆所有者等に軍鷄の傷代…